2017年03月26日

三菱のインバータで遊んでみる その4

 今回使っている三菱電機のE-700シリーズは、汎用磁束ベクトル制御とアドバンスト磁束ベクトル制御という2種類のセンサレスベクトル制御がサポートされていますが、アドバンスト制御のほうが高性能で、汎用のほうは過去の製品との互換性のために用意されているようです。ここではアドバンスト制御を使います。ちなみに、出荷時状態はV/F制御になっています。
 ベクトル制御を正確に行うには、さまざまなパラメータが必要になります。なので、実際に使う前にこれらのパラメータを設定する必要があります。パラメータには、使用するモーターの仕様で決まるものと、モーターそのものの電気的な(仕様書などには示されていない)特性値があります。いまどきのインバータは賢いので、電気的な特性値を自動的に求める機能が備わっています。特性値を調べ、設定する機能を「チューニング」といいます。

■アドバンスト磁束ベクトル制御の設定

 ベクトル制御を行う際は、モーターに関するいくつかのパラメータを設定する必要があります(以下の説明には、ベクトル制御専用のパラメータ以外のものも含まれます)。モーターの出力、極数などの情報は、ユーザーが直接指定します。ここでは以下のパラメータを設定します。おもにインバータ出荷時設定からの変更ですが、初期設定のままのものもあります。見出しの後のPnnは、パラメータnnの意味です。
 電流、周波数のパラメータは、単位を示すA、HzのLEDが点灯します。電圧のVは単位表示はありません。これらのパラメータは、小数点も表示されます。

・上限周波数 P1
 インバータが出力する最高周波数、つまり最高回転数の指定になります。ここでは定格周波数の倍の120(出荷時設定値)とします。これはV/F制御でも参照されます。

・下限周波数 P2
 インバータが出力する最低周波数、つまり最低回転数の指定になります。ここでは0(出荷時設定値)とします。これはV/F制御でも参照されます。

・電子サーマル P9
 サーマルはサーマルリレーの略で、電流による発熱で動作する保護機構です。過負荷などによる過電流を検出し、出力を遮断して機器を保護します。一般にサーマルリレーは独立した部品、あるいは開閉器とセットで使われますが、インバータには、電子的に等価な操作を行う機能、つまり過電流が流れた時に出力を遮断する機能が組み込まれています。これが電子サーマルです。初期設定ではインバータの定格に見合った電流値が設定されていますが、定格より小さなモーターを使う場合は、この値を小さくする必要があります。この値は0.01A単位で設定できます。今回使った200Wモーターの定格電流は60Hzで0.98Aです。汎用モーターの場合は、これを1.1倍した値(1.1A)を設定します(詳細はマニュアルを参照)。

・適用モーター P71
 使用するモーターの種類で、三菱の汎用、高効率、定トルク、他社製などがあります(マニュアル参照)。三菱の指定形式以外の場合、後述するオートチューニングが必要になります。今回、日立の汎用モーターを使っているので、他社汎用モーターを意味する3を指定し、後でオフラインチューニングを行います。

・モーター容量 P80
 モーター容量をkW単位で指定します。9999だとV/F制御(モーター容量は関係しない)となります。ベクトル制御の場合は、0.01kW単位でモーター容量を指定します。今回は200Wモーターなので、0.20を設定します。

・モーター極数 P81
 モーターの極数で、2、4、6などがあります。V/F制御の場合は9999にします。極数が多いほど、同じ周波数でも回転数が低くなります。60Hzの場合、2極だと3600RPM弱、4極だと1800RPM弱になります。今回は4極を使うので4を設定します。

・モーター定格電圧 P83
 モーターの定格電圧を0.1V単位で設定します。ここでは200V(出荷時設定値)を指定します。

・モーター定格周波数 P84
 モーターの定格周波数を0.01Hz単位で設定します。ここでは60Hz(出荷時設定値)を指定します。

・速度制御ゲイン P89
 負荷変動により回転数が変化したときの回復動作の応答性のパラメータで、100(%)が標準です。設定は0.1%単位で行います。9999だと指定したモーターのデフォルト値が使われます。この数字が小さいと変化に対する応答がゆっくりになり、大きいと早くなります。値が大きすぎると、状況によっては過負荷になったり、速度の振動が発生することがあります。このパラメータは実際に負荷をかけた運転で調整することにし、ここでは9999(出荷時設定値)としておきます。

・制御方法 P800
 汎用かアドバンストかを指定します。ここではアドバンスト磁束ベクトル制御なので、20を設定します。

 これらのパラメータを設定すると、アドバンスト磁束ベクトル制御モードとなります。つまり、モーター容量(P80)と極数(P81)を設定するとV/Fモードからベクトル制御モードになり、さらにP800で汎用かアドバンストかの制御方法を決めるということです。
 ベクトル制御を選択した場合は、実際に運転する前に、次に説明するオフラインオートチューニングを行う必要があります。

■オフラインオートチューニングの実行

 アドバンスト磁束ベクトル制御では、モーターの巻線の抵抗やインダクタンスなどのパラメータが必要になりますが、これらはインバータが自身で測定し、設定できます。接続されたモーターに適当な電圧を加え、それに対する電流値を測定することで、これらのパラメータを求めます。これをオフラインオートチューニングといいます。
 オフラインチューニングではモーターは回転させず(多少軸が動くことはあるようです)、必要な調査を行うので、モーターを機器に組み込んだ状態でも実施できます。オフラインチューニングにより、P82P90-94P859が自動的に設定されます。あるいは事前に求めておいたこれらのパラメータをインバータに設定することで、個々の機材でのチューニングを省略することもできるようです。
 オフラインチューニングとは別に、通常運転中にパラメータを調べ、最適な状態に自動的に調整するオンラインチューニングという機能もあります。
 オフラインオートチューニングは、以下のように行います。

・オートチューニング P96
 オートチューニングの実行、現在の状態を示します。0はチューニングを実行しない、1はアドバンスト制御のためのチューニングの実行を示します。

 前述のパラメータ設定を行った後、P96に1を設定し、PU運転モードにしてRUNボタンを押します。この時、LED表示を電流や電圧以外にしておくと、進行が数字で表示され、1から3まで進みます。
 途中で停止する場合はSTOP/RESETを押します。チューニングには数秒から数十秒かかります。RUN LEDが点滅したら正常終了で、STOP/RESETを押してチューニングを終了します。これでパラメータが設定されます。終了後にP96の値を変更する必要はありません(変更するとパラメータが無効化されます)。

 これで出荷時のV/F制御からアドバンスト磁束ベクトル制御になったはずですが、無負荷で回転させる実験では違いがわかりません。このモードの違いは、実際に負荷がかかった環境で低速運転や負荷が変動する運転をしないとわからないでしょう。

posted by masa at 18:34| 電気機械

2017年03月20日

三菱のインバータで遊んでみる その3


■インバータの容量と電源

 インバータの容量は0.4kw、0.75kWなどの表記があり、それぞれ、0.4kW、0.75kWの汎用モーターを駆動することができます。モーターの0.4kWなどの表記は、モーターが0.4kWの電力を消費するという意味ではなく、モーター出力が0.4kWという意味です。そのため実際には、これよりちょっと多い電力を消費することになります。
 インバータでモーターを駆動する際は、一時的な過負荷に耐える必要があります。定格出力よりちょっと超えただけで止まってしまったり、回路が破損するようでは使い物になりません。そのため短時間であれば、定格容量よりも大きな出力が可能になっています。もちろんこの状態で連続使用することはできません(保護機能については、パラメータで設定することができます)。
 モーターはコイルで構成される誘導負荷なので、交流電圧に対して電流の位相が遅れるため、力率が悪くなります。その結果、有効な電力に対して消費電流は増えることになります。そしてそれを駆動するインバータも、実際の電力で必要とされる以上の電流を供給することが求められます。このように、実際の有効な消費電力とは関係なく、実際に流れる電流で考えた電源容量(皮相電力)は、W(ワット)ではなくVA(ボルトアンペア)で示します。
 言うまでもないことですが(そして全体に比べればわずかですが)インバータ自身が消費する電力も考える必要があります。
 こういった理由により、インバータが実際にどれだけの規模の電源を必要とするかは、出力容量だけで算出することはできません。実際に必要な電源容量は、カタログや仕様書で調べることができます。今回使っている400W(0.4kW)モデルの場合、1.5kVAの電源容量が必要となっています。つまり100V 15Aの回路が必要ということです。ちなみに、単相100Vで使用できる最大モデル(0.75kW)の場合、2.5kVAとなっています。したがって普通のコンセントで使おうと思ったら、400Wモデルが限界ということになります。0.75kWを使う場合は、厳密には一般的な100Vエアコン用コンセント(20A)でも不足です。可能であれば、単相200Vの回路を用意し、200V用インバータを使ったほうがいいでしょう。
 もちろん、モーターを全負荷で運転しない、力率改善のための対処をするなどすれば、多少は電源容量を減らすこともできます。ただ、だからといって小容量の電源につなぐと、使い方によっては電源回路側での頻繁なトリップや発熱などの問題が発生する可能性があります。

■インバータでモーターを回す

 出荷時設定のインバータでは、次の手順でモーターを回すことができます。

1. PU/EXTボタンを押して、EXT LEDを点灯させます。
2. ダイヤルを回して周波数を指定し、SETボタンを押します。
3. RUNボタンを押すと、モーターが回転を始め、指定周波数まで加速します。
4. 運転中でも、2.の操作で回転速度を変えることができます。
5. STOP/RESETボタンを押すと、モーターが減速し、停止します。

 運転中にSETボタンを押すと、周波数、電流、電圧の順でLED表示が変化します。

 インバータは出力周波数を変えることができますが、同時に出力電圧も変化させることができます。どのように出力電圧を変化させるかで、モーターの運転特性が大きく変わります。

■V/F制御とベクトル制御

 E-700シリーズは、V/F制御とベクトル制御が可能です。ベクトル制御は、さらに汎用磁束ベクトル制御とアドバンスト磁束ベクトル制御というモードが選べます。詳しくは三菱のテクニカルニュース「三菱汎用インバータの各種制御方式」に書いてあります。
 余談ですが、三菱のインバータで単相100Vで使えるのはE-700シリーズとD-700シリーズになります。Dシリーズのほうが安価なのですが、Dシリーズではアドバンストモードがサポートされていません。大トルクの低速回転を使いたいのであれば、Eシリーズのほうがよいでしょう。

■V/F制御

 これはもっとも基本的な制御で、モーターの定格状態(200V、60Hz)で最高電圧の200Vを印加し、これより低い周波数の場合は、周波数が下がるにつれて出力電圧も下げます。周波数を定格よりも高くする場合は、最高電圧のまま、周波数だけを上げていきます(以下の図は前述のテクニカルニュースから引用)。

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 この方式は、低い周波数の時の電圧が低いため、十分な出力が得られなくなります。そのため、ある程オフセットした周波数/電圧特性とします。具体的には、周波数0Hzの時に0Vではなく、ある程度の電圧を出力するという形です。これをトルクブーストといいます。
 V/F制御は低周波時の出力特性がよくないのですが、接続するモーターの詳細情報が必要なく、1つのインバータで複数のモーターを運転できるといったメリットがあります。そのため、極端な低速回転を使わず、負荷変動の少ないファンやポンプなどに使われます。

■ベクトル制御

 ベクトル制御は、モーターの回転状態を認識し、それに対して適切な出力に制御、つまり出力電圧を調整することで、広い周波数帯域でモーターを効率的に運転することができます。
 誘導モーターは、三相交流による回転磁界で回転子を回しますが、回転子の速度は磁界の速度より遅くなります。これをすべりといいます。実際の回転数を認識することでこのすべり量がわかります。すべりが極端に大きい場合、モーターは十分に回転してない、つまりトルクが足りていないことになります。このような時に出力を高めることで、トルクを増大させて回転数を高めることができます。
 出力電流をモニターすることで、インバータはモーターの回転状態を把握することができます。モーターに流れる電流は界磁を励磁し、これにより回転子に誘導電流が流れ、回転します。モーター電流は励磁分とトルク分があり、うまくベクトル演算することで、これらの成分を算出できます。そして流れる電流成分が最適になるように電圧や周波数を制御することで、さまざまな周波数でモーターを効率的に回転させることができます。これがベクトル制御です。

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 モーターの回転を調べる方法として、モーター軸に回転センサーを装備するという方法と、出力電流を観測して回転状態を類推するという方法があります。後者はセンサーが不要なので、一般的な汎用モーターをそのまま使うことができます。これをセンサーレスベクトル制御といいます。センサーを使う方式はコストが余計にかかりますが、より正確な運転制御が可能です。
 ベクトル制御により、さまざまな周波数領域において、出力周波数と電圧を調整することで、モーターをより効率的に運転できます。特に大トルクで低速回転させることが可能になります。

 次回はアドバンスト磁束ベクトル制御の設定など。

posted by masa at 13:08| 電気機械

2017年03月12日

3Dプリンタ

 うちで使っている3Dプリンタは、XYZprintingのダヴィンチ 1.0Aで、ABSとPLAが使えるものです。Amazonの特売で割と安かったので、ついふらふらと買ってしまいました。
 これはフィラメントカートリッジにROMがはいっていて、残量が記録されます。まぁ、インクジェットプリンタのカートリッジ商売と似たようなものです。カートリッジは、フィラメント600gで約3000円ですが、そんなに大量に出力するわけではないので、コストが負担になるほどではありません。少なくとも、高価なROM制限のないモデルと比較して、差額で元が取れるほど使うかどうか??
 2016年7月から使い始め、半年で100時間ほど使っていますが、今のところ、トラブルはありません。

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 3Dプリンタというと、材料のテーブル表面への貼り付きがどうのこうので、いろいろなやり方があるようですが、うちではメーカー推奨のスティックのり(シワなしPit)の塗布で済ましています。使用後の掃除に多少手間がかかりますが、失敗はほとんどありません。手順はこんな感じ。

・製作部分にノリを塗布。
・作業後、軽く水拭き。
・ノリがだいぶ残っているように感じたら、スクレーパー(プリンタの付属品)でノリをこそぎ落として、最後に仕上げ水拭き。

 3Dプリンタは、いろいろなものを作る際に必要な部品を造形しています。旋盤やフライス盤、あるいは木工などとはまた違う感覚で工作ができるので、それなりに重宝しています。

 3Dモデルを作成する際、デザインはFusion 360を使い、これでSTLファイルを作成しています。そして純正の出力ソフトを使い、USB接続のダヴィンチ 1.0Aに出力します。プリント時間はたいてい数時間以上になるので、夜中に出力します。それなりの騒音ですが、近くに寝ている子供たちからの苦情は、今のところありません。ABSの臭いが多少しますが、閉鎖型のケースの威力か、自分が鈍感なのか、さほど気にはなりません。

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 このプリンタ、安価なのはいいのですが精度がいまいちで、穴、軸などの形状を出力した場合、数パーセント程度の誤差が出ます。そのため、ある程度の精度を求める場合は、実際に出力して寸法を測り、適当に設計データを修正するという作業が必要になります。
 写真の作例(等速ジョイント、軸とボールは金属)は、ボール溝や軸穴などはかなり試行錯誤しています。それでも精度はいまいちで、すっきりとは動きません(笑)。

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posted by masa at 14:04| 3Dプリンタ