■配線の引き出し
オルタネーターがエンジンに取り付けられていた時は、直流出力しか必要ないので、ボディアース、ネジ止めのバッテリー端子、そしてコネクタで制御電源とランプ端子が接続されていました。今回は実験のために、必要な別の配線を引き出します。
まず、オルタネーターを交流同期発電機として動かすための配線を引き出します。電機子コイルのY結線の3本の出力と、未使用だった中性線から配線を引き出します。これで三相4線交流が得られます。この4本の出力はオルタネーターボディには接地されておらず、完全にフローティングになっています。この線は、取り外したレクチファイア用の穴から引き出します。ブラシからの回転子(界磁)用の配線も引き出します。これで外部から励磁電力を送り、回転子を回転させることで、三相交流発電機となります。
・三相4線交流出力(4本)
Y結線の三相出力と中性線です。
・回転子励磁電流(2本)
回転子を励磁するための直流12Vの配線です。

交流出力は、中性線がN、三相出力がR、S、Tです。回転子はF+とF-です。
レギュレーターICはブラシホルダーと一体に組み込まれているため、外部に取り出せません。そのため、レギュレーターの配線もオルタネーター内部から引き出します。レギュレーターは物理的にオルタネーター内部に残っていますが、電気的には完全に分離されています。
レギュレーターの配線については、後で直流発電の実験をする際に説明します。
これらの配線を接続したら、オルタネーターを組み立てます。
■モーターの準備
オルタネーターを、インバーター制御の三相誘導モーターで回します。
モーター軸にVベルト用プーリーを取り付けます。プーリーは汎用品なので、軸穴は自分で加工する必要があります。そのため、9mmの下穴のモーター軸に合わせて11mmに広げ、さらに押ネジ用の穴を加工します。
モーター側プーリーは3インチタイプで、オルタネーター側のプーリーよりちょっと大きいものです。誘導モーターを120Hzで運転すればたぶん3500 RPMくらいで回るので、オルタネーターは4000 RPM程度でしょうか。実際にエンジンに装着している状態ではもっと高回転になるはずなので、今回の実験では、電圧や出力は低くなるでしょう。
■台座
適当な木材にモーターとオルタネーターを取り付けます。ベルト駆動なので、張り調整もできるようにしておきます。オルタネーターからの配線は、後でいろいろ実験できるように、端子台に接続します。
■交流の発電
同期発電機は、磁石である回転子(界磁)を回転させることで、固定子(電機子)側に交流起電力が発生します。回転子に永久磁石を使えば回転させるだけで発電しますが、電磁石の場合は、励磁電流を流す必要があります。
回転子に励磁電流を流して回転させれば、電機子巻線に交流電圧が発生します。三相4線式で、Yの接続部を中性点とできるので、オシロスコープをつないでちゃんと三相交流の波形を見ることができます。これがデルタ結線だったり、Y結線でも中性線がないと、基準電位にできる中性点がないので、そのままではこの波形を見られません。
実は、励磁電流を流さなくても、わずかな電圧が発生します。回転子は直流励磁なので、鉄心に以前の励磁による残留磁束があり、これによりわずかな電圧が発生するのです。うまくやれば、この電圧を利用して励磁することで徐々に発電電圧が上昇し、外部から電力を供給することなく、発電を開始することもできます。
実験してみたところ、励磁電流なしで、1Vちょいの起電力が観察できました。下の画像は、1目盛が0.2Vです。やたらノイズが乗っているのは、インバーターに由来するものでしょうか?

回転子は抵抗が3-4Ω程度なので、12Vを加えると数アンペアの電流が流れます。実験はとりあえず1A程度(印加電圧は約5V)で実験を行いました。励磁電流が実際にどれくらい流れるのかは、レギュレーターを接続した実験で見てみます。下の波形は1目盛が5Vです。

このオルタネーターは、回転子が12極(S-Nペアが6組)、電機子側は36スロットの分布巻きで、発電機1回転につき6サイクルの交流が発生します。
モーターとオルタネーターのプーリー直径比が約1.25(増速)で、モーターを60Hzで駆動した場合(同期速度1800 RPM)、発電出力は約200Hz(2000 RPM)となります。