2020年08月29日

ミッションをばらす その4 −− シフトレバー周辺

 ミッションの分解手順としては、次にエクステンションハウジングを外すのですが、その前準備として、ハウジングの後部にあるシフトレバー周辺を分解しておく必要があります。そこで今回は、シフトレバーに関連する部分について説明します。

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 シフトレバーはミッションの最後部に取り付けられている。


■ シフトレバー取付部

 シフト機構のうち、シフトレバー周辺はエクステンションハウジングに組み込まれているので、これを見ていきます。
 ミッションのエクステンションハウジングの最後部にシフトレバーが取り付けれています。ミッションを車両から降ろす際は、作業の都合上、事前にシフトレバーを取り外すのですが、ここでは動きを見るために、元通りにボルトで止めてあります。
 ハウジングの最後部の上側に、シフトレバーをセットするベースとなるコントロールケースという部品が取り付けられています。そしてケース上部には、取り付けられたシフトレバーを固定する押さえ板がボルト止めされています。

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 コントロールケースとシフトレバー。


 ミッションが車載されている状態では、シフトレバーだけが車内に位置するので、この部分には防水、防塵などのために2つのゴム部品が取り付けられます。

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 車内外を仕切るゴム部品


 1つめの部品はコントロールケースにはめ込むこもので、この位置でミッションとボディの間をシールし、床下から水やホコリが車内に侵入するのを防ぎます。ミッションは走行負荷により左右に傾くので、中央部は蛇腹になっており、多少の前後左右の動きを吸収できるようになっています。

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 コントロールケースでシールするゴム部品。


 もう1つのゴム部品は、シフトレバーの付け根でシールするシフトブーツです。これはシフトレバーとボディの間をシールします。シフトレバーは大きく動くので、ブーツ部分の蛇腹は大きな動きに追従できる構造になっています。このブーツは、車内から異物がシフトレバー周辺に入るのを防ぎます。またコントロールケースとシフトレバーの取付部は、特別なシール構造にはなっていないので、内部のオイルの臭いなどが多少漏れますが、このゴムブーツにより車内に臭いが侵入するのを防ぎます。

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 シフトレバーのブーツ。


 実際の車内の内装は、このゴムブーツの上に、さらに革や布の素材のシフトブーツが取り付けられ、先端のネジ部にシフトノブが取り付けられます。


■ シフトレバーの動き

 前に触れたように、通常はミッションを降ろす時点でシフトレバーとゴムシール部品は取り外されています(組付け時は、ミッションを固定した後、これらの部品をもとに戻します)。しかしレバーを取り付けるためのコントロールケースは、ミッションに取り付けたままです。
 コントロールケース上部にボールマウントの台座があり、ここにシフトレバー下部のボール部(大きい方)がはまります。そしてその上に、ボールマウントの上側となる押さえ板をボルト止めします。このように組み立てることで、シフトレバーが自由に動ける状態で、コントロールケースに取り付けられます。
 NDのマニュアルミッションは前進6速+後退1速で、レバーの3列の前後の動きで、1−2、3−4、5−6を選択します。後退は1−2列のさらに左にあり、レバーを押し込むことで1−2列より左にレバーが倒れ、その状態で前に倒します。
 どれかのギヤに入れればレバーはそのポジションを維持しますが、ニュートラルの時は、手を離すとスプリングの働きで3-4列の中立位置に戻ります。


 シフトレバーの動き。付け根の部分を見ると、押し込むとRに入れられる仕組みがわかる。


 シフトレバーは前後左右に傾けられるように、レバーの支点部分は球体になっていて、これがケース側の球面で支えられます。上側のレバー押さえ板にも同じような球面があり、レバーの球体がこれに挟まれることで、前後左右へ倒す動きができます。単なるボールマウントだと、このような動きに加えて、レバーが自由に回転できてしまいますが、これは不要な動きです。シフトレバーを支えるボールマウントは、ケース側の左右からピンが飛び出していて、これがレバー側のボールの溝にはまります。これにより、レバーは前後左右に動きますが、ねじれるような回転の動きはできなくなっています。

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 シフトレバーと押さえ板。

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 レバーと押さえ板のボールマウント部。押さえ板の下側はボールマウントの上側を構成する。ボールの回転止めの溝も見える。

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 レバーと押さえ板を外した状態のコントロールケース。

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 コントロールケースのボールマウント。回転止めのピンが見える。


 シフトレバーをボールマウント部に固定する押さえ板は、レバーが動く範囲を制約するリミッターの役割があります。前の動画を見てもわかりますが、この押さえ板の枠部分に、レバーの付け根にある八角形の部品が当たることで、前後方向、1-2列の左方向、5-6列の右方向の限界位置を定めます。NDは後退に入れる際にシフトレバーを押し込み、1-2列よりもさらに左に動かしますが、これもこの八角形の部品が関係しています。通常は1-2位置でレバー基部の左端が押さえ板の枠に接触しますが、レバーを押し込むことでこの接触部分が枠の下に下がり、レバーをさらに左に倒せるようになります。

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 押さえ板の枠とレバーの付け根の八角形の部品で、レバーの動作範囲が制限される。

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 1-2列で、八角形の部品が枠の左側に当たる。

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 レバーを押し込むと、八角形の部分の上側の細い部分が枠に当たる。その差の分、レバーは大きく傾く。


 忘れがちですが、レバーを押した状態で前後や5-6列側に倒すこともできます。レバーを右側に倒した時に当たる枠部分は、1-2列側よりも厚くなっており、レバーを押した状態で倒しても、八角形の部品が枠に当たるようになっています。これにより、5-6列より右側に倒れることはありません。
 またレーバーの前後についても、枠側が厚くなっており、押す押さないに関わらず、八角形の部品が枠に当たるようになっています。

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 5-6列、前後側は枠が厚いので、レバーを押していても八角形の部品が枠に当たるので、傾く角度は変わらない。


 コントロールケースを取り付けているボルトを外せば、ケースをエクステンションハウジングから取り外すことができます。コントロールケース内部は、ミッションと同じギヤオイルを溜めて潤滑しています。今回は抜き取り済でしたが、車両から降ろした状態であれば、ここに300ccほどオイルがあるはずなので、分解の前に抜き取っておきます。オイルを溜める構造なので、コントロールケースもほかの部分と同じく、液体ガスケットでシールされており、ボルトを抜いた後、ちょっとこじって外します。

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 取り外したコントロールケース。


■ コントロールロッドエンド

 シフトレバーのボールマウント部の下には短い棒が伸びており、その先は小さな球状になっています。この球状部分がコントロールケースの内部で、シフト操作のためのコントロールロッドという部品を動かします。

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 コントロールケースに取り付けられたシフトレバーの下端には、小さなボールがある。


 コントロールケースを外すと、シフトレバー下端の小さなボールがはまるコントロールロッドエンドという部品が現れます。これはエクステンションハウジング内部に取り付けられたコントロールロッドという丸棒の後側に取り付けられています。コントロールロッドとロッドエンドは、ハウジングの中で前後と回転の動きができます。

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 コントロールロッドエンド

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 ロッドエンドにシフトレバー先端のボール部がはまる。


 シフトレバーを動かすと、ボールマウント部を支点にして、レバーの動きと反対向きに下部のボール部が動きます。このボール部はコントロールロッドエンドの穴にはまっているので、ボールの動きに合わせてエンド部品とロッドが動くことになります。シフトレバーを前−後に動かすと、その向きと逆に下端のボールが動くので、エンド部品(及びロッド)は後−前に動きます。レバーの左−右の動きはボールの右−左の動きとなり、これによりロッドエンド部品は、ロッドを軸として左右に回転します。以下の写真は分解後に撮影したものなので、ロッドエンドがスプリングピンではなく、ビスで仮止めされています。

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 レバーを5-6列方向に倒した時のロッドエンドの状態(写真の上が前側)。

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 レバーを1-2列方向に倒した時のロッドエンドの状態。

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 レバーを前側に倒した時。

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 レバーを前側に倒した時。


 実際にコントロールロッドエンドを動かしてみる。


 このコントロールロッドの前後と回転の動きで、全部で4本あるシフトロッドを個別に動かし、シフトフォークを動かしてギヤの切り替えを行います。
 コントロールロッドエンドの周辺には、シフトレバーの動きをサポートするための部品がいくつかあります。
 シフトレバーはR列、1-2列、3-4列、5-6列の4列で前後に動きますが、ニュートラル状態で手を離すと3-4列に位置します。これはコントロールロッドエンドを両側からスプリングで押すことで実現しています。ロッドエンドの左右の張り出し部分の下に、スプリングが組み込まれたピンが斜めに取り付けられています。ロッドエンドが回転すると張り出し部分がこのピンを押すので、スプリングの力がロッドエンドを元の位置に戻そうとします。前の写真や動画を見ると、倒された側のスプリングが縮んでいるのがわかります。これが左右にあり、レバーが3-4列の位置にある時は、どちらのピンも伸び切った状態となり、押されません。これにような仕組みにより、レバーに力がかかっていないときは、3-4列に戻るのです。
 レバーを右に倒すときは5-6列だけですが、左方向は1-2列とR列があり、左右で倒れる最大量が異なります。そのため1-2列とR列から戻すための右側のピンのほうが、ストロークが長くなっています。
 コントロールケース上の押さえ板の枠とは別に、コントロールロッドエンド下部にも移動を制限する部品があります。コントロールケースの底の部分にボルトで取り付けられた鉄板の部品も規制用の部品です。エンドが5-6列側に倒れた時に、エンドの下側にある突起がこの部品に当たります。

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 底部に取り付けられた黒い鉄板は、コントロールロッドエンドの傾きを規制する部品(分解後に撮影)。


 コントロールロッドエンドはロッドに差し込まれて固定されていますが、一緒にちょっと開いたコの字型の鉄板(次の写真の左側)がロッドに取り付けられています。これはロッドエンドが前後に動き、ケース内壁に当たる時の衝撃を緩和するためのクッションスプリングとして働くものと思われます。レバーを前後に動かした時、限界位置に達する直前に、このスプリングが作用してロッドエンドが壁に当たる衝撃を緩和します。つまりシフト操作時のフィーリングを改善するための部品でしょう。

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 コントロールロッドエンドと衝撃緩和用のスプリング。


■ エクステンションハウジング分離の準備

 コントロールロッドの前側のロッドエンドは、エクステンションハウジング内でシフトロッドと噛み合っており、ここが引っかかったままだとハウジングを外せません。そのためエクステンションハウジングを外す前に、シフトレバー側のロッドエンドとコントロールロッドの結合を切り離しておきます。これでエクステンションハウジングを外す際にコントロールケース部分からロッドが抜けるので、支障になりません。
 コントロールロッドエンドはスプリングピンという部品でコントロールロッドに取り付けられています(写真の赤丸部分)。ピンポンチを使い、ハンマーで叩いて抜き取ります。

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 エンド部品とロッドを貫通するようにスプリングピンを打ち込んで固定してある。


 なおここまでの写真の一部は、分解後に撮影したため、スプリングピンではなくネジで仮止めしてあるものがあります。


■ スプリングピンとピンポンチ

 スプリングピンは、バネ鋼の板材を丸めた筒状の部品で、合わせ目に隙間があるので、ピン外形より小さな穴に押し縮めて差し込むことができます。差し込まれたピンは弾性で広がろうとするので、その力によりその位置に留まり、部品を固定することができます。これは弾性と摩擦だけで止まっているので、穴径よりちょっと細いピンポンチという丸棒を当て、ハンマーで叩いいて抜き取ることができます。
 ピンの打ち込み、抜き取りはハンマーで行いますが、このサイズのものであれば、釘を打つくらいの力で抜き差しを行えます。スプリングピンは弾性部品なので、再使用は不可で、組み立て時には新品に交換します。

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 スプリングピン

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 ピンポンチ

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 次回は、ミッションの後ろ側のエクステンションハウジングを見ていきます。




posted by masa at 09:30| 自動車整備

2020年08月23日

ミッションをばらす その3 −− ミッションケースの分離

 これからNDロードスターの6速ミッションの本体部分を分解していきます。修理のために降ろしたものではなく、オークションで入手したものなので、内部の状態は不明です。見た目は割ときれいで、各ギヤへのシフトは普通に行なえます。また手でメインドライブシャフトを回した限りでは、特に問題は見当たらないという状態です。
 今回はミッションの前半分を収めるミッションケースを分離します。

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 ミッションケース(赤丸の部分)は、クラッチハウジング、ミッションのギヤトレーンの前半分を収める。


■ 分解の準備

 まずミッション後端下部にある2本のスタッドボルトを取り外します。これはデフと結合するパワープラントフレームを取り付けるためのボルトなのですが、下に飛び出していて邪魔なので外します。十分な長さがあるので、ナットを2個取り付け、ダブルナットにしてレンチで外します。

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 ダブルナットでスタッドボルトを取り外し

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 スタッドボルト


 次にオイルを抜きます。ケース内のオイルはドレーンとフィラーのボルトを外して抜きます。シフトレバーのケース部分のオイルは、ドレーンボルトがないのでシリンジなどで抜きます。
 いざ抜こうとフィラーとドレーンのボルトを外したところ、オイルはすでに抜かれた状態でした。ドレーンボルトの先端にはマグネットが組み込まれており、摩耗した鉄粉などを集めるのですが、これもほぼきれいに清掃された状態でした。なので、オイルからは以前の状態はわかりませんでした。ただ、ケースを外した後の内部、わずかに残ったオイルを見た限りでは、ほとんど汚れていませんでした。

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 ドレーンボルトにはマグネットが組み込まれている。


 このMTは、メインドライブシャフト、メインシャフト、カウンターシャフトが組み合わされた状態で、中間に位置するベアリングハウジングに取り付けられています。その状態から前側のミッションケース、後ろ側のエクステンションハウジング、インターメディエイトハウジングを外すという手順になります。その途中で、分解の支障になる後退ギヤ、シフトフォークなどの部品を外していきます。
 ハウジング類を外したら、ギヤ、ハブ、シンクロなどをシャフトから外します。一部の作業に特殊工具やプレスの使用が指定されていますが、とりあえずできるところまでやってみます。
 組み立てる際には、再使用不可部品を新品にする、シール材(液体ガスケット)の使用、寸法調整などが必要になります。まぁこのあたりはいきあたりばったりで考えます。修理のための分解組み立てでないので気が楽です。
 ケースの分離は、整備書の手順では、前側のミッションケース、次に後ろ側のエクステンションハウジング、最後にインターメディエイトハウジングをはずしていくことになっていますが、この順序でなければならないという訳ではありません。自分でやった時は、ボルトを外した後、先にエクステンション側からオイルが漏れ始めたので、そちらを先に外しました。ここでは一応整備書の順序に従って解説していきますが、写真の内容は順序に違いがある場合もあります。
 3つのハウジングとベアリングハウジングは、共通のボルトで共締めされています。エクステンションハウジングとインターメディエイトハウジングの接続部にある長ボルトを抜き取ると、すべてのハウジングの結合が外れます。ただし内部で噛み合っている部品もあるため、これだけでハウジングを分離できるわけではありません。また各ハウジングの間は液体ガスケットでシールされており、これがけっこうしっかりと固着していること、ハウジング間の位置決めのためのピンの嵌合があるため、ボルトを抜いただけでバラバラになるわけではありません。プラハンマーで叩いたり、突起をバールでこじったりする必要があります。


■ フロントカバーの取り外し

 前側のハウジングはミッションケースという名称です。
 クラッチハウジングと一体になったミッションケースを分離するには、まずクラッチまわりの部品を取り外します。前回取り外したレリーズカラーとレリーズフォークはフロントカバーという部品に取り付けられています。フロントカバーは、カラーが摺動するパイプ部分と、ミッション前側のベアリングのカバーが一体化したものです。ベアリング部分はミッション内の潤滑領域なので、この部品でオイルをシールしています。またメインドライブシャフトをシールするためのオイルシールは、フロントカバー内部に取り付けられています。
 カラーとフォークを外すと、フロントカバーを外すことができます。これは6本のボルトで固定されているので、これを抜き取ります。このボルトのためのネジ穴は、オイルで潤滑されるミッション内部に貫通しているので、取り付けボルトのネジ部にシール材が塗布されています。シール材がないと、ボルト穴からオイルが漏れ出る可能性があります。フロントカバーはオイルをシールする部品なので、ミッションケースへの取付面に液体ガスケットが使われています。かなり強く貼り付いているので、こじって外します。ちゃんとバールを引っ掛けられるように突起が付いています。

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 フロントカバー。まだクラッチ部品が残っている状態。

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 フロントカバーからクラッチ部品、ボルトを外す。

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 取り外したフロントカバー。オイルシールが組み込まれている。

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 ボルトのネジ部にはシール材が塗布されている。


 カバーを外すと2個のベアリングが現れます。ここで使われているベアリングはゴムシールタイプでした。内部はグリース潤滑されていて、グリースが外に漏れないように、そして外部から液体や個体の異物が入らないように、ボール部がカバーされています。汎用ベアリングのカバーのタイプには、金属製で僅かな隙間があるもの、ゴムが接触して完全に密封されているものなどがあり、ここで使われているのは密封タイプでした。つまりベアリング内部には、ミッションオイルは浸入しないということです。ミッション内部はオイル潤滑なので、シールドのないオープンタイプが当たり前と思っていたので意外でした。ギヤなどの摩耗粉によるベアリング消耗を防ぐという話をネットで見かけたのですが、真実は不明です。
 この部分の2個のベアリングは、軸に圧入、ケースにはしっくり嵌めです。つまり軸からベアリングを抜くにはプーラー等が必要ですが、ケースからは力をかけずに抜くことができます。これらのベアリングのインナーの軸には位置決め用のスナップリングが取り付けられているので、ベアリングを抜き取るなら、これを外しておきます。
 ハウジングを固定しているボルトを外し、メインドライブシャフトベアリング外周のスナップリング(このスナップリングについては、少し後で説明します)を外してからてケースを前に引っ張れば、ケースを外すことができます。この場合、ベアリングは軸側に残せるので、軸のスナップリングを外す必要はありません。写真では軸のスナップリングを外しましたが、筆者が行った手順では、外す必要はありませんでした。つまりベアリング交換をしない限り、軸側のスナップリングを外す必要はありません。

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 軸から外したスナップリング


 ミッションケースの分離の作業用に、専用工具が用意されています。専用工具をフロントカバー用のネジ穴を使ってミッションケースにボルトで固定し、メインドライブシャフトをネジで押して使うというものです。整備書によれば、この段階でミッションケースとメインドライブシャフトのベアリングを引っ張り、メインドライブシャフトをギヤトレーン側に残したまま、ケースを外し、同時にメインドライブシャフトベアリングを抜き取るようです。ベアリングのアウターレースの外周部にはスナップリングがはめられており、これによりケースを引っ張るとベアリングもそれとともに引っ張られ、ベアリングがメインドライブシャフトから抜き取られるのです。このやり方をする場合は、メインドライブシャフト上のスナップリングを取り外しておく必要があります。

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 ベアリング外周にはまっているスナップリング

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 スナップリングを外す


 メインドライブシャフトのベアリングをはずす必要がない場合は、軸のスナップリングは外さず、ベアリング外周のクリップをあらかじめはずした状態でケースを引っ張れば、ベアリングをシャフトに残した状態でケースを抜き取ることができます。メインドライブシャフトベアリングとカウンターシャフトベアリングは、共にミッションケースに対してはしっくり嵌めなので、まっすぐ引けば、分離することができます。
 ここでちょっと問題が。。。ベアリングのアウターレースにはめられていたスナップリングは、おそらく再使用不可部品です。整備書ではベアリング外周のスナップリングの取り外しには記載がなく、パーツ単品では入手できない可能性があります。その場合はパーツはベアリングとセットになるため、結局ベアリングごと交換するか、あるいはスナップリングを再使用することになります。


■ ベアリングの圧入嵌めとしっくり嵌め

 ベアリングをケースや軸に取り付ける場合、圧入としっくり嵌めがあります。
 圧入は小さい穴に少し太い部品を、圧力をかけて、あるいは熱膨張を使うなどして取り付ける方法です。軸の場合は、ベアリングのインナーレース内径よりも軸の外形が太くなります。ケースへの取り付けの場合は、ベアリングアウターレース外形が取り付け穴よりも少し大きくなります。
 しっくり嵌めは逆で、穴よりも軸あるいはアウターレース径が小さくなります。わずかな隙間があるため、大きな力をかけずにはめることができます。
 ベアリングを介して軸をケースに取り付ける際は、通常はどちらかを圧入します。つまり軸に圧入して、ケースにはしっくり嵌めするか、あるいはケースに圧入して軸をしっくり嵌めにします。用途によっては両方とも圧入します。両方ともしっくり嵌めというのは、大きな力がかかる部分ではあまりありません。
 ベアリングを圧入嵌めするとき、そして外す時は、圧入されているインナーレースかアウターレースに力をかけるというのが基本です。軸に圧入ならインナーレースに力をかけ、ケースに圧入ならアウターレースに力をかけます。これはボールやローラー部分に過大なスラスト方向の圧力や衝撃を加えないためです。過度な圧力はベアリング内部の変形や傷の原因になります。
 組み立てはこれでいいのですが、分解は必ずしもこれが可能とは限りません。軸に圧入されたベアリングを抜く場合、プーラーはアウターレースにかけるこのが普通ですし、ケースに圧入されたベアリングをパイロットベアリングプーラーで抜く場合は、インナーレースに力がかかります。
 ベアリングメーカーは、内部のボール列などにこのような抜き差しの力が加わることを避けるように求めています。もし規定以上の力がかかるようなら、新品に交換することが推奨されています。
 ミッションなどの整備で分解する場合、ベアリングそのものの劣化が原因で取り外すなら、新品交換でなんの問題もないのですが、分解の都合上、不具合のないベアリングを外さなければならないこともしばしばあります。このような時も、理想的にはベアリングを新品にするのがいいのでしょうが、現実問題としては微妙なところです。手で回してみて、ガタや引っかかりがなければ再使用可能となっているのですが、実際は予防的に新品交換といったところでしょうか。
 この種の深溝ベアリングのガタを調べるときは、片手でアウターレースでつかみ、反対側の手の指でインナーレースにを広げるように支えます。そしてベアリングを回したりこじるように動かし、ガタを手で感じ取ります。この時、開放型ベアリングなら油分を落として調べられるのでわかりやすいのですが、グリース封入タイプだと、グリースの粘りによりガタがわかりにくいのです。NDのミッションはすべてグリース封入タイプが使われているので、慎重に見極める必要があります。実際問題としては、ミッション分解の手間とベアリングの価格を考えれば、安全のためにベアリング交換しておくのがいいでしょう。


■ ミッションケースの分離

 ここまで準備すれば、前側のミッションケースを外すことができます。今回はメインドライブシャフトのベアリングのアウターレースのスナップリングを外し、ベアリングをシャフト側に残すという形(整備書とは違う方法)で行いました。
 まずエクステンションハウジング側からボルトを抜き取ります。実際のケース分離ですが、液体ガスケットの貼り付きと位置決めピンの嵌合がかなり固く、また部品自体が大物だったので、プラハンマーではうまく隙間があきませんでした(先に後ろ側が外れてしまいました)。そのため、メーカー純正の抜き取りSSTを真似て、メインドライブシャフトに圧力をかけて外すことにしました。フロントカバー取り付けボルトのネジ穴に寸切りボルトをねじ込み、メインドライブシャフト先端を支点にして、この寸切りボルトをプーラーで引っ張る形で外しました。手間はかかりましたが、あっさりと外すことができました。

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 各ハウジングを固定しているボルトを外す。

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 抜き取ったボルト。

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 寸切りボルトをねじ込む。

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 プーラーをセット。

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 隙間ができた。

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 隙間ができた。

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 取り外したミッションケース。


■ ミッションケース内のギヤ

 このケースをはずすと、メインドライブシャフト、カウンターシャフトとメインシャフトの前半分がむき出しになります。メインシャフトには2組のシフトフォークも組み合わされています。

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 ミッションケースを外した状態。作業の都合で、エクステンションハウジングも外れている。

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 上側がメインドライブシャフトとメインシャフト、下側がカウンターシャフト。シフトフォークがスリーブを前後に動かし、ギヤを選択する。

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 右側からメインドライブギヤ、5速ギヤ、2速ギヤ、1速ギヤ。シフトフォークは5-6速用と1-2速用。


・メインドライブシャフト
 クラッチディスクが取り付けられていた軸がメインドライブシャフトです。これは、ケース前側のベアリングで支えられ、さらに同心に位置するメインシャフトと接する部分にもニードルローラーベアリングが組み込まれています。メインドライブシャフトのギヤ(メインドライブギヤ)は、下側にあるカウンターシャフトを駆動します。またこのギヤの後ろ側には、直結の6速用のクラッチのスプラインがあります。
 ケースを外した段階で、メインドライブシャフトはどこにも固定されていないのですが、6速用クラッチがカウンターシャフトのギヤと干渉するため、現時点ではメインシャフトから取り外すことはできません。

・カウンターシャフト
 メインドライブギヤで減速され、回転する軸です。前端はケースのベアリングで支えられています。この軸には、1速から5速、後退用のギヤが取り付けられています。ケースを外した状態では、シャフトの駆動ギヤと5速、2速、1速のギヤが見えます。

・メインシャフト
 ミッションの出力軸で、後端部でプロペラシャフトに接続します。ケースを外した露出部分の前端には6速(直結)と5速ギヤと結合するためのクラッチ機構一式があります。クラッチスリーブを動かすためのシフトフォークも見えます。
 その後ろには2速と1速用のギヤ、クラッチ機構一式があります。つまりこの部分では、メインシャフトにはクラッチハブが2セット、5速、2速、1速の3組のギヤが取り付けられていることになります。


 シフトフォークを動かすと、ギヤシフトの様子がわかりますが、遊ぶのはもう少し後にします。


■ ミッションケースの内側

 ミッションケースはクラッチ機構をカバーし、そしてミッションの前半分のギアセットを内部に収めます。各部を見てみます。

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 クラッチハウジング側。ギヤ部分のハウジングとクラッチハウジングの間に補強用リブがある。シール材が塗布されているのは、シフトロッド用のブッシュの取り付け穴。向かって右側の膨らみはスターターモーターのピニオンギヤ部。

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 ギヤケース側。シフトロッドがスライドするためのブッシュが取り付けられている。側面にオイルフィラーボルトの穴が見える。

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 次回はシフトレバー周辺を分解します。





posted by masa at 12:03| 自動車整備

2020年08月22日

ミッションをばらす その2 −− クラッチの構造

 NDロードスターの6速マニュアルミッションの話の続きで、まずは全体像について説明します。今回入手したミッションは、クラッチの部品も一部含まれていたので、ミッションからはちょっと離れますが、クラッチ部分についても解説します。


■ 入手したミッション

 これはNDのオーナーや中古部品屋さんから直接入手したものではなく、個人売買です。別車種の改造用に入手したものの、うまく合わなかったために手放したということです。そのため部品の経歴(事故車取り外しとか部品として購入とか)はわかりません。パーツリストがないので正確なことはわからないのですが、貼り付けられているラベルの番号を見ると、かなり初期のもののような気がします。入手した時点では外装はかなりきれいで、またオイル類はすべて抜き取られた状態でした。
 車両からミッションを下ろす際に、最初にシフトレバーやクラッチレリーズシリンダーを外すので、中古部品として流通する際には、シフトレバー、クラッチ部品などは含まれていないことが多いのですが、今回入手したものは、MT本体に加えて、クラッチディスクとクラッチカバー、プロペラシャフト部のキャップ、シフトレバー(ノブなし)、シフトレバー部用のゴムブーツ2つが付属していました。

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 運搬中(後ろ側)

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 運搬中(前側)


■ ミッションの外観と全体構成

 FR車用のMTは、複数種類のエンジンに対応するために、エンジンと結合するクラッチ周辺部品(クラッチハウジング、クラッチベル)をミッション本体と別体化しているものもあるのですが、このミッションはベル部も一体化されています。そのため、接続部での明確な形状変化はなく、ベル形状が細長く伸び、ミッションケースの途中で滑らかに一体化しています。

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 ミッション全体

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 クラッチハウジングとミッションケース前側


 前側のクラッチベルとミッションケースが一体化した部品の後ろには、ミッションの内部で軸を支えるベアリングが組み込まれたベアリングハウジングがあります。これは薄い部品で、その後ろにインターメディエイトハウジングという中間部のケースがあり、さらに最後部にエクステンションハウジングが取り付けられます。メインドライブシャフト、メインシャフト、カウンターシャフトは、トランスミッションケース、ベアリングハウジング、インターメディエイトハウジングの3箇所のベアリングで支えられています。
 トランスミッションの構成は、前側から以下のようになっています。

・トランスミッションケース
 クラッチ、5-6速ギヤ、1-2速ギヤを収めています。メインドライブシャフト用ベアリングとカウンターシャフトの前側ベアリングが取り付けられています。

・ベアリングハウジング
 メインシャフト、カウンターシャフトの中間ベアリングが組み込まれています。シフトロッドのディテント(クリック感)、インターロック機構もここに組み込まれます。

・インターメディエイトハウジング
 3-4速ギヤを収めています。後端にメインシャフト用、カウンターシャフト用のベアリングが取り付けられています。

・エクステンションハウジング
 後退ギヤを収めています。最後部にはプロペラシャフトが挿入されます。後端上部にシフトレバーのマウント部があり、ケース上側にはシフト用のコントロールロッド類があります。また下側には、デフケースとつながるパワープラントフレームの取付部があります。


 これらのハウジングは、後ろに位置するエクステンションハウジング側から長いボルトによって、まとめて固定されています。つまり長ボルトはエクステンション、インターメディエイト、ベアリングハウジングを貫通し、トランスミッションケースのネジ穴と噛み合うという形です。ただしこのボルトを外してもすべてのケースがばらばらになる訳ではなく、位置決めピンやギヤ類の抜き取り作業が必要です。

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 ミッションの断面図


 各部の写真と簡単な説明を以下に示します。

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 ミッションの識別シール

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 シフトレバー取付部

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 ニュートラルスイッチ。反対側のボルトはもう1つのニュートラルスイッチ取り付け穴の栓。

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 後退スイッチ

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 ブリーザー


 ブリーザーは、ケース内外の温度差などにより圧力差が発生した時に、空気を通す部品です。水などが浸入しにくい構造になっています。


■ クラッチ

 ミッション内部に触れる前に、まず最前部にあるクラッチについて説明します。
 クラッチは普通の乾燥単板ダイヤフラムスプリング式で、ペダル操作により油圧で作動します。今回入手したミッションには、クラッチディスクとクラッチカバーが付属していました。レリーズシリンダーはありません。
 クラッチの構造を簡単に紹介します。

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 クラッチディスク

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 クラッチカバー(レリーズベアリング側)

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 クラッチカバー(プレッシャープレート側)


 エンジンのクランクシャフト最後部には回転を安定させるフライホイールがあり、クラッチ機構はフライホイールに取り付けられます。フライホイールにはクラッチカバーがボルトで取り付けられており、フライホイールと一体で回転します。ミッションの入力軸(メインドライブシャフト)に取り付けられたクラッチディスクは、フライホイールとクラッチカバーに挟まれる位置に置かれます。このような構造から、車両からミッションを取り外した時、クラッチ機構はエンジン側に残った状態で分離されます。つまりクラッチディスクとクラッチカバーはフライホイールに取り付けられたまま、ミッションのメインドライブシャフトを抜き取るという形になります。クラッチを作動させるレリーズカラーとレリーズフォークはミッション側に残ります。
 クラッチカバー内部で、クラッチディスクに接触するのは、プレッシャープレートという部品です。これはストラッププレートという板状の弾性部品でクラッチカバーに取り付けられており、クラッチカバー内で前後に移動できます。クラッチカバーとプレッシャープレートの間にはダイヤフラムスプリングという菊の花のような形状のスプリングがあります。このスプリングによりプレッシャープレートをフライホイール側に押し付ける圧力がかかり、結果としてフライホイールとプレッシャープレートでクラッチディスクを強く挟む形になります。この状態ではエンジン、つまりフライホイールの回転は摩擦力によってクラッチディスクに伝わります。

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 カバーとプレッシャープレートはストラッププレートでつながっている。


 フライホイールとプレッシャープレートは金属製、クラッチディスクは両側の表面にフェーシング材(摩擦材)が貼られています。両面のフェーシング材の間には、クッション機能を持つ部品があり、クラッチ接続時の衝撃を緩和します。
 ダイヤフラムスプリングは、クラッチカバー内の支点でカバーに固定されており、その支点よりも外側でプレッシャープレートを押しています。そしてダイヤフラムスプリングの中心部をフライホイール側に押さえ付けると、反対側がプレッシャープレートから離れ、プレッシャープレートにかかっている圧力が抜けます。

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 ダイヤフラムスプリングは固定用の支点で取り付けられている。


 クラッチディスクは、ミッション側のメインドライブシャフトとスプラインではまっているので前後動できます。そのためプレッシャープレートの圧力が抜けるとクラッチディスク自体も少し後ろにずれ、プレッシャープレートともフライホイールとも、接触圧力はなくなります。これにより動力の伝達が断たれ、フライホイールが回転してもクラッチディスクに回転は伝わりません。これがクラッチが切れた状態です。

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 クラッチディスクはスプラインでメインドライブシャフトにはまる。


 エンジン側のクランクシャフト/フライホイールとミッションのメインドライブシャフトは独立して回転でき、なおかつ同心状態を維持しなければならないので、フライホイール中心には、メインドライブシャフト先端が挿入されるパイロットベアリングが組み込まれています。
 プレッシャープレートがクラッチディスクに押し付けられている状態ではクラッチディスクはフライホイール、クラッチカバーと一体になって回転します。これがクラッチがつながっている状態です。

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 クラッチの構造


 クラッチディスクのハブ部分にコイルスプリングが見えますが、これは接続時の衝撃を緩和するためのものです。クラッチフェーシングを取り付けたプレートと中心のハブは別の部品であり、このスプリングを介して回転の力を伝えます。回転速度差が大きい状態での急な接続は大きなショックが発生しますが、そのような時に、このスプリングが縮むことで、回転方向の衝撃を緩和します。


■ 無駄話 −− コイルスプリングを使ったクラッチカバー

 乗用車のクラッチカバーはダイヤフラムスプリングを使っており、スプリングやプレッシャープレートは非分解構造なので、スプリング劣化やプレート摩耗などの場合はカバー全体を交換します。古い車や大型車両ではダイヤフラムスプリングではなく、コイルスプリングを使ったクラッチカバーもあります。以前乗っていたJeep J-58はコイルスプリングタイプでした。これは分解可能な構造で、使用部品もかなり多く、調整箇所もありました。

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 コイルスプリングを使ったクラッチ

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 クラッチカバーの構成


■ レリーズ機構

 ダイヤフラムスプリングはフライホイールと一体で回っており、中心部を押し込むことでクラッチが切れます。そのためのレリーズ機構はミッション側に組み込まれています。スプリング側は回転しているので、中心部を押し込むためにベアリングが使われます。ミッションのメインドライブシャフトを覆う形状のパイプ上を前後に摺動するレリーズカラーという部品があり、その先端にレリーズベアリングが取り付けられています。レリーズカラーが前側に動くとレリーズベアリングがダイヤフラムスプリングを押し込みます。レリーズベアリングは軸方向に力がかかるので、スラスト(アンギュラー)ベアリングが使われています。

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 レリーズカラー/ベアリングは前後に摺動する。

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 レリーズベアリングのダイヤフラムスプリング接触側。


 レリーズカラーの摺動は、レリーズフォークという部品で行います。これはミッションケース外側に取り付けられたクラッチレリーズシリンダーが押す力をテコの原理で向きを変え、レリーズカラーを強い力で前側に押します。ミッションケース内にはボール状の支点があります。ボールマウントなのでここはぐらぐらしてしまいますが、レリーズカラーに当たる部分が二股に別れて2箇所で接触するので、フォークに力が掛かっている間はちゃんと安定します。

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 レリーズフォーク

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 レリーズカラーのレリーズフォーク接触側。

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 フォークの支点のボール部。

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 取り外したレリーズフォーク。

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 レリーズフォークとレリーズカラー


 レリーズフォークはボールマウントに対して、クリップで取り付けられています。フォーク先端はカラーの金具に引っかかっているだけです。またミッション外部に飛び出す部分は、防水防塵のためにゴムブーツがはめられています。これらは簡単にはまっているだけなので、工具を使わずにすべて取り外すことができます。
 ボールマウントは、ディープソケットがあれば前から外せますが、ない場合は、レリーズフォークのための側面の開口部からストレートメガネを差し込んで緩めることができます。この部品はケースの固定には関与していないので、交換するのでなければ、はずす必要はありません。

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 ボールマウントの取り外し

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 レリーズフォークとボールマウント


 レリーズカラーとレリーズフォークの動く様子の動画です。



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 次回はミッションの前半分のケースを取り外します。



posted by masa at 11:24| 自動車整備