2020年09月26日

ミッションをばらす その14 −− シフトアップとシフトダウン

 マニュアルミッションの仕組みについて、一番わかりにくいところはシンクロメッシュ機構でしょう。シンクロメッシュ機構、略してシンクロは滑らかなギアシフトに欠かせない要素です。ネットや雑誌の記事でもしばしば取り上げられていますが、その仕組をきちんと解説したものは、あまり見たことがありません。ここでは雑誌記事などより詳しく説明してみようと思います。
 今回はシンクロの機構の前に理解しておくべきこと、つまりシフトアップ/ダウン時のギヤやシャフトの速度の関係を説明します。


■ 車両の速度/メインシャフトの回転速度と各段ギヤの回転速度など

 常時噛合式の変速機は、メインシャフト上で異なる速度で回転するの各段のギヤのうち、1つを選んでメインシャフトに結合することで、使用するギヤ段を選びます(直結段は、メインドライブシャフトとメインシャフトを結合します)。
 このような構造のミッション内部の要素を、軸の回転の連携という観点で見てみると、メインシャフトと、メインドライブシャフト/カウンターシャフト/各段のギヤ(長いので、以後、単に入力側と呼びます)の組み合わせに分けることができます。メインシャフトはプロペラシャフトを介して車輪とつながっているので、常に車両の走行速度に応じた速度で回転します(こちらを出力側と呼びます)。それに対して入力側は、いくつかの要素が関連します。

14-010-mt.JPG
 エンジン、クラッチ、入力側、メインシャフトの関係。


 ミッションの出力側、入力側、エンジンの回転数の関係を以下にまとめます。どの状態であっても、メインシャフトの速度は、車両の走行速度に応じたものとなることに注意してください。

・ニュートラル、クラッチ切
 ニュートラル状態のメインシャフトは、どのギヤとも結合していないので、入力側の回転に関与しません。この状態でクラッチが切れていれば、入力側は(ほかの回転に引きずられることはあるものの)抵抗なく自由に回転できる状態です。

・ニュートラル、クラッチ接
 ニュートラルでクラッチが繋がっていれば、入力側はエンジン回転数に応じて速度で回転します。走行中であればミッション内で入力側、出力側とも回転していますが、それらの間に関連性はありません。

・何らかのギヤにはいっている、クラッチ切
 ギヤがニュートラルでない場合、入力側は、出力側と結合しているギヤの減速比に応じて、車両速度に比例した速度で回転します。クラッチが切れているので、エンジン回転速度と車両速度は無関係です。

・何らかのギヤにはいっている、クラッチ接
 ギヤがニュートラルでなく、クラッチが繋がっている状態では、ミッション入力側はギヤと車両速度に応じた速度で回転し、エンジンもミッション入力側と同じ速度で回転しています(ここではエンジンのパワーオン/オフは関係ありません)。


■ シフト操作

 実際の自動車の走行中のシフト操作を考えてみます。走行中にクラッチを切ると駆動力の伝達は断たれますが、自動車は惰性でほぼそのままの速度で走り続けます。ミッションの中では、出力側のメインシャフトの回転速度は変化しないということです。そしてギヤがニュートラルでないので、入力側も連携して回転しています。
 クラッチを切るとエンジンからの動力が伝わらなくなるので、メインドライブシャフトや各段のギヤにはエンジンの駆動あるいは制動トルクはかかりません。噛み合っているクラッチハブと各段のギヤにもほとんどトルクはかかっていないので、軽い力でスリーブを動かし、ニュートラルにすることができます(トルクがかかっているとスリーブ、ハブ、ギヤのスプライン接触面で摩擦力が発生するため、軽い力ではスライドしません)。ニュートラルにすると、クラッチからメインドライブシャフト、カウンターシャフト、そして各段のギヤまでの入力側の駆動系は、駆動源が一切なくなるため、オイルの抵抗などで回転速度が低下していきます。
 走行中、つまり出力側のメインシャフトが回転している時に、ニュートラルからいずれかのギヤに入れる場合はどうなるでしょうか?
 スリーブが移動してハブとギヤが結合しやすいように、スリーブとギヤ側のクラッチのスプラインの接触部分は、先端を斜めに落とすチャンファ加工をしてあります。これにより、ギヤとスリーブのスプラインの谷と山がずれていても、先端の斜面によってうまく噛み合うようになっています。具体的には、車両速度で回転しているメインシャフト側のスプラインが、ニュートラルで自由に回転する各段のギヤのクラッチスプラインをずらし、スリーブが進入していく形になります。これにより、スリーブとギヤのスプラインが噛み合います。

14-020-cham-1.JPG
 スプライン噛合部のチャンファ。

01-170-cham1.JPG
 クラッチスリーブのスプラインのチャンファ加工。

01-180-cham.JPG
 ギヤ側スリーブのチャンファの形状は、ギヤによって異なっている。


 ただし実際に回転しながらこのような噛合動作をするためには、スリーブとギヤのクラッチ部の回転速度が等しいか極めて近い必要があります。速度差が大きいとと、スリーブを動かしてもチャンファがちょっと接触した時点で弾かれてしまい、噛合状態に至りません。この時、弾かれる際に金属の打音が発生します。スリーブに力がかかっているとこの打音が連続的に発生します。このガガガガという音がギヤ鳴り、あるいはギヤ鳴きで、チャンファ部の摩耗や変形、破損につながります。


■ 余談 −− クラッチを切らないギヤチェンジ

 クラッチを切ることで、ミッション内の各部にはエンジンによる駆動/制動のトルクがかからなくなります。クラッチハブ、スリーブ、各段のギヤのクラッチ部にも力がかからないので、軽い力でスリーブを動かし、断切が可能になります。エンジンのトルクがかかっている時はこれらの摺動部に大きな力がかかっており、接触面の摩擦によりスライドさせるのに大きな力が必要です。そのため、シフト操作の際にはクラッチを切るのです。
 しかし、アクセルをうまく調整して走行速度とエンジン速度を一致させれば、ミッションにかかる駆動トルクを小さくすることができます。この状態であれば、クラッチを切らなくてもスリーブを軽くスライドさせることができます。ギヤをニュートラルにするのは簡単で、シフトレバーにニュートラル方向の力を加えながら、アクセルをゆっくり調整すればスコッと抜けるタイミングがあります。
 ニュートラルにするより難しいですが、ニュートラルからギヤを入れることもできます。後で説明するダブルクラッチと同じ考え方で、エンジン回転数を調整し、入力側と出力側の速度をぴったりと一致させれば、クラッチを切らずにギヤを入れることができます。
 これらの操作はちょっと練習すればできるようになりますが、僅かな回転速度差でもシンクロやチャンファに大きな負担がかかり、ミスするとシンクロ、ギヤやスリーブののスプラインが破損します。まぁやらないほうが身のためです。
 今のMT車はクラッチを切らないとエンジンがかけられなくなりましたが、それ以前の車であれば、このような制限はありませんでした。そのため停止して1速ギヤを入れた状態でエンジンを始動して走行開始、以後クラッチを切らずにギヤチェンジ、停止時にはエンジンを止めることで、まったくクラッチを使わずに走行することも不可能ではありませんでした。


■ シフトアップとシフトダウン

 走行中にシフトアップ、シフトダウンすると、ミッションに関連するこれらの要素の速度がどのように変化するかを考えます。以下の図は話を簡単にするために3速ミッションとしています。1速から3速のギヤはそれぞれギヤ比が異なるので、異なる速度で回転します。各ギヤは入力側の回転数に比例して速度が変化しますが、それぞれのギヤの速度の比率は変化しません。例えば1速のギヤ比が3、2速が2、3速が1なら、エンジン回転が1000RPMなら1速は333RPM、2速は500RPM、3速は1000RPM、エンジン回転が3000RPMなら1速は1000RPM、2速は1500RPM、3速は3000RPMとなります。
 ここで2速から3速へのシフトアップと2速から1速へのシフトダウンを考えます。
 まずシフトアップです。シフトアップの場合は、車両速度が同じなら、エンジンの回転数は以前より低くなります。これをもっと詳しく見てみます。

14-050-Up.JPG
 2速から3速へシフトアップ。


1. 2速で走行中、メインシャフトと2速ギヤの回転速度(ギヤとスリーブの噛合部の速度)が一致しています。

2. クラッチを切り、ギヤをニュートラルにします。これにより入力側の速度が低下していきます。車両は定速走行しているので、メインシャフトの回転速度は変化しません。

3. 3つの各段のギヤの速度は比例関係を維持したまま低下していきます。3速ギヤの速度は2速よりも高かったのですが、これも低下していきます。

4. 速度低下の過程で、3速ギヤの速度が、メインシャフトの速度に一致するタイミングがあります。このタイミングではスリーブとギヤの速度が一致するので、弾かれることなく、ギヤをつなぐことができます。

−−−−

 シフトアップ操作は楽です。この図で示したように、自然に速度低下していく上の段のギヤが、メインシャフトの速度にほぼ一致する瞬間があり、そのタイミングに合わせてやればうまくギヤを噛み合わせることができます。ぴったり合わなかったとしても、近い速度域での噛み合いなら、チャンファによりうまく噛み合い、自由回転している入力側の速度をメインシャフトの速度に一致させることができます。
 つまりシフトアップはクラッチを踏み、シフトレバーを2速から3速に切り替え、クラッチをつなぐという形になり、日頃やっている操作と同じです。
 しかしシフトダウンは簡単ではありません。2速から1速へのシフトダウンで考えます。
 シフトアップの図を見ると、クラッチを切ってニュートラルにした後の速度低下で、1速ギヤの速度が自然にメインシャフトの速度に一致することはありません。速度差が大きくなっていくだけです。そのため車両が走行している限り、メインシャフトと1速ギヤをつなぐことはできません。1速ギヤとメインシャフトをつなぐためには、どうにかして入力側の速度を上げ、1速ギヤの速度を1速用のスリーブの速度に近づける必要があります。この手順を以下に示します。

14-060-Down.JPG
 2速から1速へシフトダウン。


1. 2速で走行中、メインシャフトと2速ギヤの回転速度は一致しています。

2. クラッチを切り、ギヤをニュートラルにします。これにより入力側の速度が低下していきます。車両は定速走行しているので、メインシャフトの回転速度は変化しません。

3. ニュートラルのままクラッチをつなぎ、エンジン回転速度をあげます。これにより入力側の各ギヤの回転速度も高くなります。ここで1速ギヤの速度を、メインシャフトと噛み合い可能な速度以上にします。

4. クラッチを切ると入力側の速度が再び下がり始めます。この段階では、1速ギヤがメインシャフトの速度と一致するタイミングがあります。その時にギヤを1速に入れれば、1速ギヤはメインシャフトと噛み合える速度になっているので、弾かれることなく切り替えることができます。

5. クラッチをつなぎます。この時、エンジン回転数を高めておくと、クラッチをつないだ時のショックを防ぐことができます。

−−−−

 以上のような手順により、シフトダウンを滑らかに行うことができます。この手順では1回のシフトダウン操作で2回クラッチペダルを踏むことになるので、ダブルクラッチと呼ばれます。
 ギヤ比の離れ方などによっては、シフトダウンだけでなく、シフトアップでもダブルクラッチを使用したほうがギヤが入れやすい場合もあります。
 現在のマニュアルミッションでは、ダブルクラッチのような操作を行わなくても、滑らかに変速を行うための仕組みが用意されています。各段のギヤとメインシャフトの間で速度差があっても、円滑に任意のギヤの噛合操作を行えるようにするための仕組みが、シンクロメッシュ機構です。


■ 余談 −− ダブルクラッチ、ブリッピング、ヒール&トゥー

 マニュアルミッション車の運転テクニックとして、ヒール&トゥーやブリッピングという用語をよく聞きます。またこれらに関連してダブルクラッチに言及されることもあります。これについて簡単に説明します。


・ブリッピング

 走行中にシフトダウンすると、同じ車速でもエンジン回転数が高くなります。シフトダウンを行い、エンジン回転数が低い状態で単純にクラッチをつなぐと、大きな変速ショックが発生したり、強いエンジンブレーキがかかります。これを避けるために、シフトダウンしてクラッチをつなぐ際に、あらかじめアクセルを踏んでエンジン回転数を車速相応に上げておきます。このようにすることで、クラッチを繋いだ時のショックを緩和できます。もしエンジンブレーキをかけるなら、クラッチを繋いだ後にアクセルを戻します。
 このようにクラッチをつなぐ際に、アクセルを踏んでエンジン回転数を上げる方向に調整することをブリッピングといいます。


・ヒール&トゥー

 コーナーの通過などで、ブレーキを踏んで車両速度を下げつつ、コーナー脱出に向けてシフトダウンすることがあります。シフトダウン後のクラッチ接続で大きなショックが発生しないように、ブレーキを踏んだままブリッピングを行うことを行うことをヒール&トゥーといいます。つま先(トゥー)でブレーキペダルを踏みながら、足首をひねってかかと(ヒール)でアクセルを踏みます。ペダル配置によっては、両方をつま先で踏む場合もあります。

−−−−

 ヒール&トゥーもブリッピングもシフトダウンに関連して行われますが、ヒール&トゥーはアクセルとブレーキの同時操作、ブリッピングはアクセル操作のことです。
 さらにこれに関連してダブルクラッチがあります。前に説明したように、ダブルクラッチはシフトダウンを円滑に行うための操作で、回転速度を合わせるためにニュートラルでクラッチをつないだ時と2度めのクラッチ接続の際にブリッピングを行います。ヒール&トゥーはシフトダウンを伴う操作なので、ダブルクラッチ操作を同時に行うことがあります。この場合、右足のつま先でブレーキを踏みながらかかとでアクセルを2回、あるいは連続的にふかし、左足でクラッチペダルを2回踏むことになるので、かなり忙しい操作となります。
 これらの区別がわからないといった質問をよく見かけますが、実際の操作が何を行っているのか、どのような目的で行っているのかを理解すれば、難しい要素はなにもありません。
 最近のマニュアルミッションは、次回から説明するシンクロメッシュ機構により、ダブルクラッチを踏まなくても容易にシフトダウンできるようになっています。また一部のMT車では、ミッションの状態を検知し、シフト時にエンジンの回転数を自動的に制御することも行われています。つまりアクセル操作で明示的にブリッピングを行わなくても、エンジン制御コンピューターが自動的にやってくれるのです。まぁこういった支援機能がおもしろいかどうかは意見の分かれるところでしょうが。


−−−−

 次回からは、シフト時に回転速度を合わせる操作をやってくれるシンクロメッシュ機構について解説します。



posted by masa at 12:54| 自動車整備

2020年09月19日

ミッションをばらす その13 −− シャフトの前半分の分解

 前回、メインシャフトとカウンターシャフトをベアリングハウジングから抜き取りました。これでこれらのシャフトは、メインドライブシャフト、メインシャフト、カウンターシャフトに分離することができます。
 これらのうち、分解する要素が残っているのはメインシャフトだけです。

12-250-shaft-6.JPG
 取りはずしたシャフト。これらのシャフトはもうつながっていない。


■ カウンターシャフト

 カウンターシャフトは、前側のベアリングを除いて、これ以上は分解できません。カウンターシャフトの前側にあるカウンターシャフトのメインドライブ減速ギヤ、5速、2速、1速の4個のギヤは、シャフトと一体化されており、個々のギヤを分離することはできません。

13-010-counter-1.JPG
 取りはずしたカウンターシャフト。

13-020-counter-2.JPG
 前側の4個の歯車は一体化されている。

13-030-counter-3.JPG
 最前部にベアリングが圧入されている。


 シャフト中央部にベアリングを取り付け、その後ろ側には4速、3速のカウンターギヤが、間にスペーサーを置いてはまります。これらのギヤはセレーション嵌合です。その後ろにはインターメディエイトハウジング用のベアリングが圧入され、そして後退用のカウンターギヤをセレーションではめ込み、最後にロックナットで締め込みます。これらのギヤ、スペーサー、ベアリングは、ベアリングの圧入とロックナットにより固定される形になります。

13-040-counter-4.JPG

13-050-counter-5.JPG
 後ろ半分のギヤも取り付けてみた(ベアリングはない)。


■ メインドライブシャフト

 カウンターシャフトを分離すると、メインドライブシャフトの6速クラッチ部に干渉するカウンターシャフトの歯車がなくなるので、メインドライブシャフトとメインシャフトを分離することができます。

13-060-main-1.JPG
 メインドライブシャフトとメインシャフトが組み合わさった状態。

13-070-main-2.JPG
 クラッチハブより前側(左側)がメインドライブシャフト。

13-080-drv-1.JPG
 メインシャフトからはずしたメインドライブシャフト。

13-090-drv-2.JPG
 シャフトの左側のスプラインにクラッチがはまり、先端部はクランクシャフトのパイロットベアリングに差し込まれる。

13-100-drv-3.JPG
 真横から見る。右側から6速のシンクロ用コーン、クラッチスプライン、そして中央にあるのがメインドライブギヤ。

13-110-drv-4.JPG
 メインドライブシャフトがメインシャフト、カウンターシャフトと噛み合っている状態。メインシャフトとの結合部は前後方向への位置決め機能はないので、写真では歯車の噛合位置がちょっとずれている。


 メインドライブシャフトは、ギヤの前側に残っているベアリングを除き、これ以上分解はできません。シャフトとメインドライブギヤ、直結6速用のクラッチ部は一体化されています。カウンターシャフトとメインドライブギヤが、1つの金属部品から切削されているのか、あるいは摩擦溶接などで複数の部品を組み合わせているのかはわかりません。
 メインドライブシャフトとメインシャフトは同心で別々に回転できますが、この接続部分は、メインシャフト側の細い軸がメインドライブシャフトの穴にはまる形になります。ここにはニードルローラーベアリングが組み込まれています。メインシャフト上の1速、後退以外のギヤは転がりベアリングを使っていませんが、これはギヤがさほど重くないこと、空転時の速度差があまり大きくなく、そして大きなラジアル荷重がかからないためです。メインドライブシャフトは、メインドライブギヤの噛合により反力が発生するため、ラジアル荷重を受けられる構造になっています。

13-120-drv-5.JPG
 メインシャフトとの差し込み用の穴があいている。

13-130-drv-6.JPG
 メインシャフトとメインドライブシャフトはニードルローラーベアリングを介してつながっている。


 メインドライブシャフトは、一番前側がエンジンのクランクシャフトに取り付けられたパイロットベアリングに差し込まれます。その後ろのスプライン部はクラッチディスクが摺動する部分です。その後ろはフロントケースのレリーズカラーが摺動するパイプ部分に収まり、そしてミッションケースで支えられるベアリング、その後ろにカウンターシャフトを駆動するメインドライブギヤがあります。そして最後部は、直結の6速用のクラッチになっています。つまりこのシャフトは、組み立てられた状態では、先端のパイロットベアリング、中央部のミッションケースベアリング、そしてメインシャフトと結合する部分のニードルローラーベアリングの3個のベアリングで支えられていることになります。


■ メインシャフト前側の分解

 ベアリングハウジングから取り外し、さらにメインドライブシャフトを分離した状態のメインシャフトには、まだいくつか部品が付いています。1-2速のギヤとクラッチハブ、5速ギヤと5-6速用のクラッチハブが残っています。


1. 6速用シンクロナイザーリング、5-6速クラッチスリーブ

 メインドライブシャフトを外せば、クラッチハブに付いている6速用のシンクロナイザーリングを外すことができます。これはカーボンコートのシングルコーンタイプです。またメインドライブシャフト用のニードルローラーベアリングが残っていれば、これも外しておきます。

13-140-main-3.JPG
 メインシャフトの最前部

13-150-main-4.JPG
 メインシャフト先端にニードルローラーベアリングがある。その後ろのクラッチハブに、6速用シンクロナイザーリングがはまっている。


 クラッチスリーブを前側にスライドして外します。スリーブを外すと、3個のシンクロナイザーキーも外れます。

13-160-main-5.JPG
 取りはずしたクラッチスリーブ、シンクロナイザーキー、シンクロナイザーリング、ニードルローラーベアリング。シンクロナイザーリングはカーボンコートなので、内周面が黒くなっている。


2. 1速ギヤ

 メインシャフトに残っている部品のうち、最後部にあたる1速ギヤとシンクロナイザーリング、クラッチスリーブなどを取り外します。

13-170-main-6.JPG
 右側が1速ギヤ。(写真はまだメインドライブシャフトを分離する前のもの)


 1速ギヤはメインシャフトに対して自由に回転します。ここはニードルローラーベアリングが使われており、内側にスリーブ、ベアリングハウジング側にスラストワッシャーがあります。ベアリングが圧入されている状態では、ワッシャーとスリーブはベアリングにより押さえられ、固定されていますが、今は外されているので、これらも手で抜き取ることができます。1-2速関連部品は、すべてシャフトの後ろ側に抜き取ります。
 この段階では、スラストワッシャー、1速ギヤ、ニードルローラーベアリング、スリーブを抜き取ります。そして1-2速クラッチスリーブとシンクロナイザーキーを後ろ側に抜き取ります。シンクロナイザーリングはカーボントリプルコーンタイプです。

13-180-main-7.JPG
 1速ギヤ用のニードルローラーベアリング、スリーブ、スラストワッシャー。


 クラッチスリーブを後ろ側にスライドし、スリーブとシンクロナイザーキーを取り外します。シンクロナイザーキーも回収しておきます。

13-190-main-8.JPG
 1速ギヤ、ベアリング類、トリプルコーンシンクロ、クラッチスリーブ、シンクロナイザーキー。

13-200-main-9.JPG
 1速ギヤのベアリングハウジング側。

13-210-main-10.JPG
 1速ギヤとシンクロナイザーリングを組み合わせた状態。

13-220-main-11.JPG
 トリプルコーンシンクロは3個の部品から構成される。左からインナーコーン、ダブルコーン、シンクロナイザーリング。インナーコーンの外周とシンクロナイザーリングの内周がカーボンコートになっている。


3. 1-2速クラッチハブ

 1-2速用のクラッチハブは、セレーション嵌合でメインシャフトに取り付けられています。

13-230-main-12.JPG
 1-2速クラッチハブは、特に固定部品はない。


 この段階では、ハブを固定するナットやスナップリングはないので、引っ張れば取り外すことができます。ちょっと硬かったので、2速ギヤにベアリングプーラーをかけて抜き取りました。

13-240-main-13.JPG
 延長したプーラーでハブを抜き取る。


 クラッチハブと一緒に2速用シンクロナイザーリングも取り外します。これは1速用と同じカーボントリプルコーンタイプです。

13-250-main-14.JPG
 ハブをはずすと、2速用シンクロ、2速ギヤもはずれる。

13-260-main-15.JPG
 1-2速用クラッチハブ。


 クラッチハブを外せば、2速ギヤはそのまま後ろに抜き取れます。2速ギヤはニードルローラーベアリングなどは使っておらず、メインシャフト表面に直接接して回ります。そのためシャフト表面には油溝があります。

13-270-main-16.JPG
 2速ギヤ(ハブ側)。ギヤ径とクラッチ径がほぼ等しい。

13-280-main-17.JPG
 2速ギヤ(前側)。


 2速ギヤの前側のスラストを受けるために、メインシャフトそのものにツバ状の加工が施されています。これがあるため、ここより後ろの部品はシャフトの後ろ側に抜き、前側の5-6速部品は前側に抜き取ります。

13-290-main-19.JPG
 1-2速関連部品を外したメインシャフト。5速ギヤの右側にスラストを受ける部分が見える。中央のちょっと色が違うところは、ベアリングが圧入されていた部分。


4. 5-6速クラッチハブ

 1-2速まわりはシャフトの後方に抜き取りますが、5-6速まわりの部品は前方に抜き取ります。現時点で一番前にある5-6速クラッチハブをはずします。まず軸にはまっているスナップリングを外し、その後、クラッチハブを取り外します。

13-300-main-20.JPG
 メインシャフト最前部。先端にニードルローラーベアリングがはまる。

13-310-main-21.JPG
 スナップリングをはずす。

13-320-main-22.JPG
 ハブを抜き取る。シンクロナイザーリングがギヤ側に残っている。

13-330-main-23.JPG
 1-2速クラッチハブ。


5. 5速ギヤ

 ハブを取りはずした状態では、5速ギヤに5速用のシンクロナイザーリングが付いています。これはダブルコーンタイプが使用されています。

13-340-main-24.JPG
 5速ギヤとシンクロナイザーリング。

13-350-main-25.JPG
 ダブルコーンシンクロ(ギヤ側)。

13-360-main-26.JPG
 ダブルコーンシンクロ(ハブ側)。インナーコーンの内周面はコーンではないので、形状がトリプルコーンと異なっている。


 シンクロナイザーリングを取りはずすと5速ギヤが現れます。5速はダブルコーンシンクロなので、シンクロナイザーリングとの接触部分の形状が変わっています。ギヤ側にコーン部はなく、ダブルコーンが噛み合う穴だけがあります。穴をつなぐように光っている部分は、インナーコーンが接触する部分です。ここは接触しますが、大きな摩擦力は発生しません。

13-370-main-27.JPG
 5速ギヤのシンクロ側。このギヤはダブルコーンシンクロを使っているので、ほかのギヤと形状がかなり変わっている。


 5速ギヤを取り外します。これは2速ギヤと同様に、メインシャフトに直接接して回転するもので、シャフト上に油溝があります。スラストワッシャーなどはありません。

13-380-main-28.JPG
 取りはずした5速ギヤ。ギヤ比が小さいので、クラッチに比べ径がかなり小さい。

13-390-main29.JPG
 軸からすべて取り外した状態。シャフト上のツバ状の部分の形状がよくわかる。


−−−−

 これらをすべてはずせば、メインシャフトは1本の軸のみとなります。シャフトを見てみると、それぞれの部品を取り付けるために、場所ごとに直径や表面の加工が異なっているのがわかります。また部品の取り付け/取り外しを順に行うために、徐々に軸径が変わっているのがわかります。

13-400-main-30.JPG
 すべての部品を外したメインシャフト。各部の形状、太さが違うのがわかる。

 軸の形状としては、摺動するクラッチディスクやプロペラシャフトを取り付けるためのスプライン、回転しないクラッチハブを固定するためのセレーション、ロックナットのための雄ネジ、ベアリングなしでギヤが回転する部分のための油溝、ワッシャー類をはめるための溝やボール穴などの加工があります。またベアリングを圧入する部分などは、固定位置とその前後で、直径が僅かに変わっている部分などがあります。

−−−−

 次回は、シンクロメッシュの解説の前知識として、シフトアップ/シフトダウン時の挙動について説明します。

posted by masa at 18:25| 自動車整備

2020年09月18日

ミッションをばらす その12 −− さらにシャフトを分解

 今回はメインシャフトの分解の続きで、3-4速クラッチハブの取りはずしから始めます。

12-010-mt.JPG
 ここまで分解済。


■ シャフトの後ろ部分の分解を続ける

 前回、3速ギヤとシンクロ、クラッチスリーブまではずしました。次はクラッチハブを外します。


7. メインシャフトの3-4速クラッチハブ

 3-4速クラッチハブはメインシャフトに38mmのロックナットで締め付けられています。これはカウンターシャフトのロックナットと同様に、軸のキー溝のような部分に、ナットの一部を食い込ませることで、緩みを防止しています。緩める前に、この食い込み部分をマイナスドライバーやバールを使って起こしておきます。

12-020-nut-1.JPG
 ハブを固定しているロックナット。


 カウンターシャフトは軸端のナットだったのでインパクトレンチで緩めることができましたが、このハブのナットは軸の中央部にあり、ソケットレンチは使えません。またハブは外周部に対して内側がへこんでおり、ナットはその部分にあるので、モンキーレンチのようなフラットなツールは使えません。整備書では専用ツールの使用が指示されていますが、ここはオフセットメガネレンチか角度のついたコンビネーションレンチを使ってみます。
 ハンドツールでナットを外すとなると、ナットがはまっている軸の固定が必要です。まず回転を押さえる必要があります。これは前側にある5-6速、1-2速のクラッチを利用します。前側のスリーブをスライドさせ5速に噛み合せます。この状態でもう一方の1-2速スリーブを動かし、1速か2速に噛み合せます。これで二重噛合状態になり、軸は回転しなくなります。ミッションの二重噛合を防ぐインターロック機構はシフトロッドに作用するので、今の状態なら手でスリーブを動かして二重噛合にできるのです。

12-030-lock.JPG
 スリーブを5速と2速に噛み合わせ、シャフトの回転のロックする。


 ナットを緩めるには、軸の回転の固定に加え、全体の固定も必要です。ナットは200Nm以上のトルクで締められているはずなので、約500mmの長さのツールであっても、40kg以上の力をかけねばならず、それに耐える状態で固定しなければなりません。今回は、角材をハブ部分に枕のように置き、紐で何重にも縛りました。

12-040-wrench.JPG
 使用した38mmコンビレンチ

12-050-fix-1.JPG
 ミッション軸を角材に紐でしばりつけて固定する

12-060-fix-2.JPG
 このようにレンチをかけてみたのだけれど。


 ここまで準備したのですが、コンビレンチによる方法は失敗に終わりました。このロックナットは径の割には薄くてレンチとのかかりが浅く、力をかけると外れてしまうのでした。レンチをかけてハンマーで叩くなど、いろいろな方法を試してみたのですが、緩む前にレンチが外れ、しかも外れたときに角をなめて、ますます外れやすくなるという状態になり、結局、ハンドツールの使用は諦めました。
 このロックナットは変形させる部分があるので再使用不可部品です。なので破壊しても構いません。そこで、タガネとハンマーで外すことにしました。タガネは鉄の棒の先を平らな刃にした道具です。この刃をナットの外周部に斜めに当て、それをハンマーで叩きます。刃がナット外周部に食い込み、ハンマーの衝撃はナットを回転させる力になります。タガネの刃をハブや軸に当てないように気をつけながら、ハンマーで(割と力を入れて)叩くことで、ナットが少しずつ回り、緩めることができます。

12-070-tagane-1.JPG
 タガネとハンマーでナットを回して外した。

12-080-tagane-2.JPG
 ナットの外周部にタガネの食い込んだ傷が見える。


 ロックナットを外せばハブは抜けるのですが、強く締め付けられていたこともあり、この部分のセレーション嵌合はかなり固く、手では取り外せませんでした。そのためプーラーを使うのですが、ハブ、シンクロナイザーリング、4速ギヤの間の隙間は狭いため、プーラーは4速ギヤに掛けます。この嵌合はベアリングの圧入ほどの硬さではないので、薄爪タイプのアマチュアベアリングプーラーを寸切りボルトで延長して抜き取りました。爪の外れ止めには、木工用クランプを使っています。これは前にベアリングの抜き取りに失敗した構成です。

12-090-hub-1.JPG
 アマチュアベアリングプーラーを寸切りボルトで延長して使う。

12-100-hub-2.JPG
 プーラーの爪は4速ギヤのクラッチ部にかける。


 嵌合が外れれば、クラッチハブとシンクロナイザーを取り外すことができます。シンクロナイザーは3速用と同じ構成です。

12-110-hub-3.JPG
 ギヤ、ハブなどがまとめて抜ける。

12-120-hub-4.JPG
 ギヤとハブの間に、トリプルコーンシンクロがはさまっている。


 クラッチハブの外周のスプライン部の内側には、シンクロナイザーキーを外側に押し出すためのシンクロナイザーキースプリングが取り付けられています。これはハブの前後に2本組み込まれています。

12-130-hub-4.JPG
 シンクロナイザーキースプリング。先端の曲がった部分がハブの内側の穴にはまっているのがわかる。


8. メインシャフトの4速ギヤ

 クラッチハブを外せば、4速ギヤは抜き取るだけです。

12-140-gear-1.JPG

12-150-gear-2.JPG
 4速ギヤ、トリプルコーンシンクロ、クラッチハブの表と裏。


 4速ギヤもニードルローラーベアリングは使われていません。しかしメインシャフトに直接接するのではなく、スリーブを介しています。このスリーブはクラッチハブと共にロックナットで締め付けられており、セレーション嵌合ではありませんが、実質的にメインシャフトに固定されています。そのため4速ギヤは、このスリーブに対して回転することになるので、スリーブ表面には油溝があります。またスリーブの前側(ベアリングハウジング側)には、後退アイドラーギヤと同じようなフリクションダンパーが取り付けられています。これは内周部の金属部品が爪でスリーブに噛合、外周部のゴム部品が4速ギヤに接触しており、ギヤの回転に対して抵抗となります。
 分解時には、スリーブ、フリクションダンパー、4速ギヤをまとめてメインシャフトから外します。

12-160-sle-1.JPG
 スリーブ、フリクションダンパー、スラストワッシャー。

12-170-sle-2.JPG
 フリクションダンパーとスリーブを組み合わせた状態。


9. カウンターシャフトの4速カウンターギヤ

 メインシャフトの3速のギヤ、クラッチハブ、4速ギヤを外せば、4速カウンターギヤを抜き取れます。このギヤはセレーション嵌合ですが、軽く抜けました。

12-180-gear-1.JPG
 4速カウンターギヤをカウンターシャフトからずらして抜き取る。

12-190-gear-2.JPG
 取りはずした4速カウンターギヤ

−−−−

 ここまでギヤやベアリングを取り外せば、ベアリングハウジングより後ろ側の要素がなくなり、メインとカウンターの2本のシャフトをベアリングハウジングから取りはずすことができます。


■ シャフトの抜き取り

 メインシャフトとカウンターシャフトで、ベアリングハウジングより後ろの要素をすべて取りはずしたら、この2本のシャフトをベアリングハウジングから抜き取ることができます。

12-200-shaft-1.JPG
 ベアリングハウジングより後ろ側の部品をすべてはずした。


 整備書では、プレス台にベアリングハウジングを置き、メインシャフト後端をプレスで押し、少し動いたら、カウンターシャフトのギヤが干渉しないようにカウンターシャフトをプラハンマーで叩いて押し出し、2本のシャフトを並行して抜き取るように指示されています。このとき、2本のシャフトがバラけないように、紐で縛っておきます。

12-210-shaft-2.JPG
 2本のシャフトの歯車類が相互に干渉するので、2本を同時に抜き取る必要がある。


 我が家にはプレスがないので、別の方法を考えます。ベアリングハウジングには、前後のハウジングを取り付けるボルトのための貫通穴や、オイルを流すための開口部があります。ここに寸切りボルトを通してナットで止め、メインシャフト後端にプーラーを取り付け、ハウジングに対してシャフトを押すという方法を試してみます。ハウジングにボルトを取り付けるナットは、ハウジングとの接触面を傷つけないように、ワッシャーをかまします。

12-220-shaft-3.JPG
 ベアリングハウジングに寸切りボルトをセットし、メインシャフトにプーラーをセットして引く。


 メインシャフトとカウンターシャフトの両方を少しずつ抜かないといけないので、カウンターシャフト用にも2本の寸切りボルトを取り付け、1つのプーラーを入れ替えながら作業を行いました。1回に数ミリずつしか押し出せないので、手間と時間のかかる作業でした。プーラーが2個あれば楽だったのですが。

12-230-shaft-4.JPG
 カウンターシャフトも、同じように2本の寸切りボルトをセットして引く。


 本来であれば、2本のボルトとシャフトはまっすぐに並んでいなければならないのですが、既存の穴を使うため、ちょっとずれています。そのためプーラーのボルトを強く締め込んでいくと、プーラーが傾き、ボルトが曲がることがあります。そのへんに気をつけながら、そして前のベアリング抜き取りの時と同じようにシャフトを回しながら、慎重に、しかしそれなりの力を加えてベアリングからシャフトを抜いていきます。メインシャフトのベアリングは、シャフトの径がかなり太いということもあり、圧入はかなり固いものでしたが、力を掛けたり抜いたり、曲がったボルトを修正したりしながら、どうにか抜きました。カウンターシャフトのほうはさほど大きなベアリングではなかったので、簡単に抜けました。

12-240-shaft-5.JPG
 2本ともベアリングから抜き取った。

12-250-shaft-6.JPG
 抜き取った2本のシャフト。


■ ベアリングハウジング

 シャフトを抜き取った後、ベアリングハウジングには2個のベアリングが残されています。これはリテーナーの板で押さえられており、ボルトを抜いてリテーナーを外せば、ベアリングを外すことができます。

12-260-bearing-1.JPG
 シャフトを抜いた後のベアリングハウジング(前側)。

12-270-bearing-2.JPG
 ベアリングハウジング(後ろ側)。

12-280-bearing-3.JPG
 リテーナーをはずせば、ベアリングを(プレスなどで)抜き取れる。この取り付けボルトは、ネジ部に液体ガスケットが塗布されていた。


 ミッションケース、エクステンションハウジングのベアリングはしっくり嵌めでしたが、この部分は圧入になっています。つまりこの部分のベアリングは、インナーレースもアウターレースも圧入ということです。ベアリングはハウジング後面と面一になるようにセットしなければならないので、リテーナーのない側に位置調整用のシムをセットして取り付けることになっています。
 現時点ではこのベアリングは抜き取っていませんが、組み立ての際にはベアリングを交換することになるかもしれません。整備書によれば、このベアリングの抜き取りと挿入はプレスを使うことになっています。

−−−−

 次回は、シャフトの前半分の分解を行います。


posted by masa at 08:44| 自動車整備