2017年03月20日

三菱のインバータで遊んでみる その3


■インバータの容量と電源

 インバータの容量は0.4kw、0.75kWなどの表記があり、それぞれ、0.4kW、0.75kWの汎用モーターを駆動することができます。モーターの0.4kWなどの表記は、モーターが0.4kWの電力を消費するという意味ではなく、モーター出力が0.4kWという意味です。そのため実際には、これよりちょっと多い電力を消費することになります。
 インバータでモーターを駆動する際は、一時的な過負荷に耐える必要があります。定格出力よりちょっと超えただけで止まってしまったり、回路が破損するようでは使い物になりません。そのため短時間であれば、定格容量よりも大きな出力が可能になっています。もちろんこの状態で連続使用することはできません(保護機能については、パラメータで設定することができます)。
 モーターはコイルで構成される誘導負荷なので、交流電圧に対して電流の位相が遅れるため、力率が悪くなります。その結果、有効な電力に対して消費電流は増えることになります。そしてそれを駆動するインバータも、実際の電力で必要とされる以上の電流を供給することが求められます。このように、実際の有効な消費電力とは関係なく、実際に流れる電流で考えた電源容量(皮相電力)は、W(ワット)ではなくVA(ボルトアンペア)で示します。
 言うまでもないことですが(そして全体に比べればわずかですが)インバータ自身が消費する電力も考える必要があります。
 こういった理由により、インバータが実際にどれだけの規模の電源を必要とするかは、出力容量だけで算出することはできません。実際に必要な電源容量は、カタログや仕様書で調べることができます。今回使っている400W(0.4kW)モデルの場合、1.5kVAの電源容量が必要となっています。つまり100V 15Aの回路が必要ということです。ちなみに、単相100Vで使用できる最大モデル(0.75kW)の場合、2.5kVAとなっています。したがって普通のコンセントで使おうと思ったら、400Wモデルが限界ということになります。0.75kWを使う場合は、厳密には一般的な100Vエアコン用コンセント(20A)でも不足です。可能であれば、単相200Vの回路を用意し、200V用インバータを使ったほうがいいでしょう。
 もちろん、モーターを全負荷で運転しない、力率改善のための対処をするなどすれば、多少は電源容量を減らすこともできます。ただ、だからといって小容量の電源につなぐと、使い方によっては電源回路側での頻繁なトリップや発熱などの問題が発生する可能性があります。

■インバータでモーターを回す

 出荷時設定のインバータでは、次の手順でモーターを回すことができます。

1. PU/EXTボタンを押して、EXT LEDを点灯させます。
2. ダイヤルを回して周波数を指定し、SETボタンを押します。
3. RUNボタンを押すと、モーターが回転を始め、指定周波数まで加速します。
4. 運転中でも、2.の操作で回転速度を変えることができます。
5. STOP/RESETボタンを押すと、モーターが減速し、停止します。

 運転中にSETボタンを押すと、周波数、電流、電圧の順でLED表示が変化します。

 インバータは出力周波数を変えることができますが、同時に出力電圧も変化させることができます。どのように出力電圧を変化させるかで、モーターの運転特性が大きく変わります。

■V/F制御とベクトル制御

 E-700シリーズは、V/F制御とベクトル制御が可能です。ベクトル制御は、さらに汎用磁束ベクトル制御とアドバンスト磁束ベクトル制御というモードが選べます。詳しくは三菱のテクニカルニュース「三菱汎用インバータの各種制御方式」に書いてあります。
 余談ですが、三菱のインバータで単相100Vで使えるのはE-700シリーズとD-700シリーズになります。Dシリーズのほうが安価なのですが、Dシリーズではアドバンストモードがサポートされていません。大トルクの低速回転を使いたいのであれば、Eシリーズのほうがよいでしょう。

■V/F制御

 これはもっとも基本的な制御で、モーターの定格状態(200V、60Hz)で最高電圧の200Vを印加し、これより低い周波数の場合は、周波数が下がるにつれて出力電圧も下げます。周波数を定格よりも高くする場合は、最高電圧のまま、周波数だけを上げていきます(以下の図は前述のテクニカルニュースから引用)。

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 この方式は、低い周波数の時の電圧が低いため、十分な出力が得られなくなります。そのため、ある程オフセットした周波数/電圧特性とします。具体的には、周波数0Hzの時に0Vではなく、ある程度の電圧を出力するという形です。これをトルクブーストといいます。
 V/F制御は低周波時の出力特性がよくないのですが、接続するモーターの詳細情報が必要なく、1つのインバータで複数のモーターを運転できるといったメリットがあります。そのため、極端な低速回転を使わず、負荷変動の少ないファンやポンプなどに使われます。

■ベクトル制御

 ベクトル制御は、モーターの回転状態を認識し、それに対して適切な出力に制御、つまり出力電圧を調整することで、広い周波数帯域でモーターを効率的に運転することができます。
 誘導モーターは、三相交流による回転磁界で回転子を回しますが、回転子の速度は磁界の速度より遅くなります。これをすべりといいます。実際の回転数を認識することでこのすべり量がわかります。すべりが極端に大きい場合、モーターは十分に回転してない、つまりトルクが足りていないことになります。このような時に出力を高めることで、トルクを増大させて回転数を高めることができます。
 出力電流をモニターすることで、インバータはモーターの回転状態を把握することができます。モーターに流れる電流は界磁を励磁し、これにより回転子に誘導電流が流れ、回転します。モーター電流は励磁分とトルク分があり、うまくベクトル演算することで、これらの成分を算出できます。そして流れる電流成分が最適になるように電圧や周波数を制御することで、さまざまな周波数でモーターを効率的に回転させることができます。これがベクトル制御です。

vec.JPG

 モーターの回転を調べる方法として、モーター軸に回転センサーを装備するという方法と、出力電流を観測して回転状態を類推するという方法があります。後者はセンサーが不要なので、一般的な汎用モーターをそのまま使うことができます。これをセンサーレスベクトル制御といいます。センサーを使う方式はコストが余計にかかりますが、より正確な運転制御が可能です。
 ベクトル制御により、さまざまな周波数領域において、出力周波数と電圧を調整することで、モーターをより効率的に運転できます。特に大トルクで低速回転させることが可能になります。

 次回はアドバンスト磁束ベクトル制御の設定など。

posted by masa at 13:08| 電気機械