仮止めしたホース
■ ブリーザーホース
このホースはリアデフケース用のブリーザーホースです。
デフに限らず、車の各部のギヤボックスの軸の露出部分は、内部の潤滑油が外に漏れず、また外部から水が浸入しないように、オイルシールという部品で密閉しています。これはゴムのリップがリング状のスプリングで軸に当たるという構造になっています。一般的なオイルシールは大きな圧力差に耐えられるようにはできていません。ギヤボックス内と外部の間で圧力差があると、リップのゴムと軸の間に隙間があいて、内部の油が外に漏れたり、あるいは外部から水が浸入します。
ギヤが回転すると温度が上がり、内部の気圧が高くなります。また冷えると気圧が下がります。このような圧力変化で漏れが起こらないように、ギヤボックス内の圧力を外部の気圧と同じに維持するための開口部があります。もちろん、ここから水が入っては意味がないので、水などがはいりにくいように工夫されています。この圧力調整用の開口部のことをブリーザー(Breather)といいます。Breathは呼吸という意味です。空気が出たり入ったりするからでしょうね。
一般的な乗用車などでは、ギヤボックスの上部に短いパイプを取り付け、外部から水が入りにくいようにキャップが取り付けられています。このキャップは跳ねかかった水などの浸入は防ぎますが、空気は出入りできます。
サファリのような車両は深い水たまりを走ることができますが、このような走行はギヤボックスに水がかかるだけではなく、水没してしまうので、簡単なキャップだけでは浸水することがあります。走行中のギヤボックスは温度が上がっていますが、水中にはいると温度が急激に下がり、内部の気圧が低下します。これによりブリーザーから空気を吸い込むのですが、深い水たまりなどでブリーザー部分まで水没していると、空気の代わりに水を吸い込んでしまいます。
これを防ぐために、サファリのデフケースのブリーザーはホースで伸ばされています。フロントデフはエンジンルームの上部まで伸びており、通常の走行では水に浸りません。リアデフはフレームのクロスメンバーパイプ内に伸びています。このパイプはさほど高い位置ではありませんが、構造的に水が入りにくくなっているので、通常の水たまり走行では水を吸い込むことはありません。
このメンバーのパイプにホースを差し込むための部品が錆びて破断してしまったため、ホースがぶらぶらしていた訳です。
リアデフのブリーザーホース
■ デフケース側
ブリーザーホースはデフケース内の空気の出入りのためのものなので、当然デフケース最上部にあります。ここにL字に曲がったパイプ部品をねじ込むようになっています。
パイプ部品
■ フレーム側
ホースのつながる先は、リアアクスルのちょっと後ろ、燃料タンクの前に位置するメンバーです。このメンバーは丸パイプをちょっと曲げた形状になっていて、その上側にデフケース側と同じ部品がねじ込まれています。この部品のパイプ部が腐食で破断していました。
この部分はアクスルの影になって、足回り洗車でもほとんど水がかからない場所のようです。泥や凍結防止剤などがきれいに流れず、それが原因で腐食したのでしょう。
メンバー側の取付部
アップで
■ 部品の手配
まずは部品の手配です。L字パイプがついたねじ込み部品とホースを固定するクリップを用意します。デフケース側の交換も考え、2セット用意しました(今回はメンバー側のみ交換しました)。
部品
■ 古い部品の取り外し
写真ではジャッキアップしてウマでフレームを支え、その後ホイールを外してアクスルを目一杯下に下げていますが、実際にはジャッキアップせず、そのまま下に潜って作業できました。
ジャッキアップ
さて、錆びて破断した部品です。素直には外れません。最初、ラチェットメガネで外そうとしたのですが、これが12角タイプで、ナット部の角を少しなめてしまいました。その後フレアナットレンチを使ったものの、やはりなめそうです。ラスペネでもだめ。
結局、ショック交換時の固着ナットの取り外しに使った冷却浸透スプレーのお世話になりました。作業が寒い時期だったので、まずヒートガンで温め、スプレーをたっぷり吹き、さらにトンカチで軽く叩いて衝撃を与えるという作業を2回くりかえしました。フレアナットレンチでは角がなめてしまうので、より強く加えられるバイスグリップを使いました。
これでどうにか緩みました(実際には秋に作業を始めて、何度か挫折し、冬に交換となりました)。
取り外した部品

この部品は写真をよく見るとわかりますが、テーパーネジになっています。部品には向きがあるので、向きを合わせるため、きつめに締められていたのかもしれません。
■ 新しい部品の取り付け
フレーム側のネジに損傷はないので、新しい部品をねじ込みます。一応液体ガスケットを塗布しておきました。テーパーねじは締め込み終わりという位置はなく、どんどん締めることができますが、過大トルクで締めると緩まなくなってしまいます。これを適度なトルクでホースを取り付けられる角度にします。今回は最初に手で締めて、その後、ちょうどいい位置までフレアナットレンチで1回転弱締め込んでよしとしました。
これにデフからのホースを差し込み、クリップで固定しておしまいです。
出来上がり


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