TRITONというのは、2000年前後にKORGから販売されていたシンセサイザーのシリーズです。「けいおん!」でムギちゃんが使っていたのは、これの末期のモデルです。家にあるのはTRITON Studioの88鍵モデルで、2002年頃に購入したものです。シリアル番号が45なので、思いっきり初期モデルですね。
TRITON StudioはMIDIによる外部インターフェイスに加えて、以下の機能、デバイスを備えており、これ1台でオーディオCDの作成までできるミュージックワークステーションという位置づけです。
・オーディオのデジタル/アナログ出力
・オーディオのデジタル/アナログ入力
・マイク入力(アンバランス、非給電)
・外部入力、サウンド出力、CDのサンプリング機能
・シーケンス作成/演奏/オーディオファイル出力
・拡張音源ROM(オプション)
・物理モデリング音源基板(オプション)
・5GBハードディスク
・フロッピーディスク
・CD-Rドライブ(オプション)
・SCSI
・mLAN(オプション)
TRITON Studio PRO
インターフェイスは数十個のスイッチとタッチ式液晶パネルです。またPCにソフトを入れることで、MIDI経由で演奏以外の外部制御もある程度できたような記憶があります。
まぁ音楽制作をしない自分にとっては、単なる大げさなシンセなのですが。
操作部分
ドライブ
■ スイッチの不調
このシンセ、パネルに50個あまりのスイッチがあるのですが、これに使われているALPSのスイッチの出来が悪く、使い始めて割とすぐに接触不良が発生しました。ネットで見ると同じような事例が多いので、たぶんスイッチの問題なのでしょう。10年以上使った時点で、半数程度のスイッチに問題があり、機能させるために何度も押す、強く押すと状態でした。
購入から約15年くらいしたころ、このスイッチが普通に秋葉原の千石で入手できることを修理動画で知り、スイッチを買うだけ買ってきました。それから1年くらい、ふと思い立って修理を始めたのでした。
新旧のスイッチ
■ 分解
かつて、キーの隙間からの異物混入の際に分解したことがあるのですが(発掘されたのはギターのピックでした)、このキーボード、分解の方法がわかりにくいのです。以前の分解はだいぶ前のことなので、もはや手順は完全に忘れています。
76鍵以下のモデルについてはネットでいくらでも情報があるのですが、88鍵モデルについては見つかりません。88鍵モデルはピアノタッチキーボードなので、取り付け方も含め、構造がまったく違うのです。しかも全体が重たいため、ネジを外して持ち上げても、きちんと外れているのかまだどこか引っかかっているのかもよくわかりません。
76鍵以下のモデルは、鍵盤も上モノ側に取り付けられており、底板を外すのは簡単なのですが、88鍵モデルは鍵盤が下側に取り付けられているため、手順がかなり異なるのです。
結果として、めぼしいネジをすべて外し、外れる部品から取り外していくというやり方になってしまいました。このようにして、まずキーボードとドライブ類が取り付けられた底板、基板類が取り付けられた上モノと分離しました。この過程で、電源付近にコロコロとさまよっている1円玉を発見したのですが、回収に失敗し、奥に落ちてしまいました。これを回収するために、底板からキーボードユニットまで外すはめに。。。
上下の分離、キーボードの取り外し
上モノ側には、スティック、スイッチ基板、液晶パネル、メイン基板、電源が取り付けられています。スイッチは一番表側、つまり裏から見ると奥側になるので、いろいろ外していきます。すべてコネクタ接続なので、記録しながら外します。それでもいくつか、記録し忘れて、えいやっで戻したものあるのですが。。
リアパネルに取り付けられたジャック類もすべて外し、一部のものはさらにコネクタも分離します。もうぐしゃぐしゃです。上下を分離する際には、キーボード、ドライブ類、ヘッドフォンジャックなどのコネクタも抜き、ケーブルクリップから外しておかないと泣きを見ます。HDDの基板側コネクタが結構トリッキーな押さえ方だったので、注意します。抜け止なのか、コネクタを押さえるようにはめられているスポンジ材を抜かないとコネクタを抜き取れません。キーボードは、2組のコネクタに加えて、全然別の部分から別のフレキシブル基板配線が出ているので忘れないように。自分は忘れてました(笑)。
全部バラした結果、最終的にはどう分解すべきであったかがわかりました。詳細は最後に。。。もっともスイッチ基板を取り出すためには、結局全部ばらさないとだめなんで、結果は一緒ですが。
■ スイッチの交換
中央に液晶パネルがあり、その左右にスイッチが多数並んでいます。左右は基板が別れているので、それぞれを取り外し、ハンダ付けされているスイッチを交換します。
ディスプレイが中央にあり、その右側にはテンキーやバンクセレクト、サンプラーなどの操作スイッチがあります。これらは1枚の基板になっているので、まずこれを外します。この基板の裏には電源ユニットがあるので、それを取り外し、あとはコネクタを抜けば、比較的簡単に基板を取り外せます。
右側スイッチ基板と電源
右側スイッチ基板
この基板は片面基板なので、ハンダ吸取器や吸取線を使えば、簡単にスイッチを外せます。後は新しいスイッチをハンダ付けするだけです。この時、スイッチの底部がきちんと基板に接していることが大事です。浮いていると裏側の配線パターンに力がかかり、断線することになります。
ディスプレイの左側にはモード設定などのスイッチがあります。このスイッチを取り付けている基板は、メイン基板の裏(正しい向きで見ると上側)にあるので、まずメイン基板を外さなければいけません。コネクタが多いので、後でわかるように記録しておきます。よく見るとコネクタ部分に電線の色の情報が書かれているので、ピン数、線の長さとの組み合わせで、割と簡単に戻すことができます。
メイン基板
メイン基板と取り付け金具を外すとスイッチ基板が現れます。ディスプレイ部と共締めされているのでその部分のネジを外す必要があります。ディスプレイそのものを外す必要はありません。
姿を表した左側スイッチ基板
左側スイッチ基板
このスイッチ基板は、単なるスイッチ取り付け用だけでなく、ほかのモジュールとのインターフェイスを担っているようで、たくさんのコネクタが備えられています。接続関係をちゃんと記録しておきましょう。
このスイッチ基板は両面スルーホールなので、ハンダ除去はちょっと面倒です。パターンを破損するとうまく動かなかくなってしまいます。実は1ヶ所ランドを破損し、断線させてしまいました。この部分はジャンパー線を飛ばしてごまかしました。
交換したスイッチ
■ ハードディスクの交換
ここ最近、スイッチを入れてもシステムが素直に起動せず、忘れた頃に立ち上がるという状態になっていました。どうもドライブの認識のタイムアウト待ちのようです。もちろん、HDDは認識されていません。このキーボードはシステムはすべてROMにあり、HDDはデータ専用なのです。
フロント側にCD-RWドライブとFDDがあり、奥側にHDDが取り付けられています。アナログ系にノイズが乗らないように、フラットケーブルはシールドされています。
ドライブまわり
とりあえず古い内蔵HDD(2.5インチ、ATA、5GB、2000年製造の骨董品)を取り外し、USBアダプタを使ってPCに取り付けたところ、認識できて、ファイルをすべて拾うことができました。分解時のドッタンバッタンでヘッドの張り付きが解消したのかも。
手元にあった2005年製の40GBのドライブをFAT32でフォーマットし、ファイルを転送してシンセに戻しました。最初は認識しませんでしたが、抜き差しや再起動を繰り返していたら認識してくれました。もしかすると単なる接触不良だったのかも。まぁ、古い方はベアリングの異音も出ていたので、寿命は寿命です。
■ 正しい分解手順
必要な修理を終え、基板や構造部品を組み立てる過程で、この機材の適切な分解方法がやっとわかりました。底板にあるいくつかのネジを外せばよかったのでした。
底板には何種類化のネジがあり、オプションの音源基板を取り付けるためのアクセスパネルのネジ、鍵盤ユニットを固定している太いネジ、鍵盤前縁部品を止めているネジ、その他の固定ネジがあります。これらのネジのうち、サイドパネル、リアパネルに固定するものと、中央部にあるいくつかの小さいネジを外せば、上下を分離することができます。この状態で、底板には鍵盤、鍵盤前縁カバー、ドライブ類が残り、操作パネル、サイドパネルとリアパネルが一体化したものを分離できます。内部では配線がつながっていますが、リアパネルを支点にして前側を持ち上げるような形でゆっくり起こせば、コネクタやクリップを外すだけの十分な空間を確保できます。具体的には以下のコネクタを外します。
・鍵盤部の引き出し基板に接続する2組のコネクタ
・鍵盤部右橋から伸び、メイン基板に行くコネクタ
・FDDコネクタ(フレキシブル基板タイプ)
・HDD、CDドライブ用のIDEコネクタ(メイン基板側のスポンジ状のクッションを外す)
・CDドライブ用のオーディオコネクタ2本
・ヘッドフォンコネクタ1本(基板側で外す)
これらを外すと上下を完全に分離することができます。
ただしい分解
コネクタを外さず、うまく上側を支えておけば、この状態で通電して動かすことができます。本格的な機器故障の場合は、この状態でトラブルシューティングすることになるでしょう。
タグ:シンセサイザー