2020年06月25日

NDの下回りを見る −− 後ろ側

 前回は前側を紹介したので、今回は後ろ側です。


■ リア下部

 エンジンからの排気系統は途中で触媒とサブマフラーを経て、プロペラシャフト、パワープラントフレームと共にフロアトンネルを通り、メインマフラーに至ります。触媒はタコ足状のエキゾーストマニホールドのちょっと後ろ、ミッションの横にあり、そのちょっと後ろにサブマフラーがあります。メインマフラーはリアアクスルより後ろ、車体後端に位置します。排気管はメインマフラーから直接でています。途中にサブマフラーを置くことで排気特性を調整し、トルクカーブを改善しているらしいです。

08-rear-010.JPG
  ミッション横に触媒

08-rear-020.JPG
  デフより少し前にサブマフラー

08-rear-030.JPG
  最後部にメインマフラー

08-rear-040.JPG
  メインマフラーの接続部にはスプリングを使用

08-rear-050.JPG
  リアバンパー内側のバックライトとセンサー類


■ ファイナルギヤとリアサスペンション

 縦置きFRなので、プロペラシャフトの後端にファイナルギヤボックスが位置します。最終減速はハイポイドギヤで行われます。NDの6速MTは6速が直結でオーバードライブギヤがありません。そのためファイナルのギヤ比は一般的な車よりも小さめになっています。

ファイナルギヤ比(ND3世代目)
MT   2.866
1.5L AT 4.100
2.0L AT 3.583

 ファイナルギヤに組み込まれたデフギヤは、オープンタイプとトルセンLSDタイプがあります。SグレードとAT全車がオープンデフで、その他はトルセンデフ(整備書での呼称はスーパーLSD)です。

08-rsus-010.JPG
rsus-010  デフギヤケース

08-rsus-020.JPG
rsus-020  デフケースとドライブシャフト


 トルセンはトルクセンシングという意味で、左右の出力のトルク配分を検出し、トルクの偏りがあると、トルクが小さい方(例えば空転している側)によりトルクを配分するように働きます。これにはいろいろな仕組みがありますが、NDで使われているスーパーLSDはベベルギヤとテーパー摩擦を使うタイプです。機械式LSDのような多板クラッチはありません。
 ベベルギヤ式のディファレンシャルギヤは、デフキャリアに固定されたピンを回転軸とするピニオンギヤと、ドライブシャフトにつながるサイドギヤから構成されます。スーパーLSDは、サイドギヤとデフキャリアの間で摩擦が発生し、差動制限する構造です。
 オープンデフでは、サイドギヤとキャリアの間は平面で、オイルで潤滑されているので、キャリアとギヤの間の摩擦はわずかです。それに対してトルセンデフは、キャリアとギヤの接触部がテーパー(円錐面)になっており、スラスト方向(軸方向)の力がかかると、大きな摩擦が発生します(マニュアルミッションのシンクロと同じような感じです)。キャリア内でピニオンギヤとサイドギヤは噛み合っていますが、左右にトルク差が発生すると、ギヤの噛合反力によりサイドギヤにスラスト方向の圧力がかかり、差動制限が作用します。
 また板状のスプリングが組み込まれており、ピニオンギヤとの噛み合いによるスラストがない状態でも、多少のスラスト力がサイドギヤにかかっています。そのため後輪を両方とも上げた状態で一方のタイヤを回転させると、反対が側のタイヤも同じ向きに回転します(オープンデフだと逆回りします)。

08-rsus-030.JPG
  スーパーLSDの構造


 このタイプのLSDは、多板クラッチを使う機械式LSDに比べると差動制限効果は小さいとされています。まぁメーカー純正デフなので、そんなに強力なものを入れることはできないし、気合を入れて走る人は、デフなんて交換するものと思っているでしょう。
 デフケースは、リアサスペンションと共にサブフレームに組み込まれます。そのためデフやファイナルの組み換えなどを行うには、サブフレームごとボディから外して行うことになります。
 前に触れたようにデフケースはパワープラントフレームによってミッションと結合しています。このような構造にすることで、ドライブシャフトの駆動の反動でデフ前部が持ち上がるワインドアップが起こらないようになっています。またエンジンからデフまでが剛性構造で前後に渡ることで、ボディ補強の役割も果たしています。
 デフとリアアップライトの間は、両端に等速ジョイントを持つドライブシャフトで接続されます。ジョイントは、デフ側がトリポードジョイント、アップライト側は一般的なボール式のバーフィールドジョイント(ベル型ジョイントと表記されています)を使っています。ドライブシャフトはサスペンションの動きにより、角度が変化するだけでなく、長さの変化も必要ですが、ローラーを3個使うトリポードジョイントは、ジョイントそのものに伸縮性があり、この部分で摺動できます。
 このドライブシャフトはモデルによって太さが異なります。基本的には2LのRFと1.5Lのソフトトップ、ATとMTで異なります。ただしソフトトップでも、NR-Aは太いタイプが使われています。

ドライブシャフトの太さ
ソフトトップ 1.5L NR-A(MT) 34mm
ソフトトップ 1.5L(MT)    31.5mm
ソフトトップ 1.5L(AT)    26mm
RF 2.0L(MT)        34mm
RF 2.0L(AT)        28mm


 後輪は5本のリンクを使ったマルチリンクサスペンションを使っています。アップライトを支える5本のリンク、ドライブシャフト、ショックアブソーバー、リアスタビ(モデルによってはない)が見えます。
 スタビライザーはリアアクスル後方にあり、短いリンクを介してリンクアームの1本の途中に結合しています。

08-rsus-040.JPG
  リアサス全景

08-rsus-050.JPG
  ハブとブレーキ

08-rsus-060.JPG
  後方から見たところ

08-rsus-070.JPG
  前方上方から見たところ

08-rsus-080.JPG
 後方から見たところ

08-rsus-090.JPG
  後方内側から見たところ。各リンクはサブフレームから伸びている

08-rsus-100.JPG
  内側から見たところ


 アップライトには駆動軸を支えるためのベアリングが組み込まれていますが、NDではこのベアリングの単品交換は不可能で、フロントと同様にハブごと交換します。そのためベアリング交換となると、かなり高くつくことになります。
 リアブレーキはソリッドタイプのディスクブレーキで、片押しキャリパーで動作します。パーキングブレーキはディスクブレーキと一体になっており、パーキングレバーに伸びるワイヤーにより、パッドを機械的に押し付ける構造です。

08-rsus--110.JPG
  下側から見たリアブレーキキャリパとパーキングブレーキ


■ 燃料タンク

 40Lほどの燃料タンクが、トランクの前と幌収納部の間に収まります。給油口のカバーはドアロックと連動しており、解除時に縁の部分を押すと開きます。オープナーのレバーやスイッチ、鍵穴はありません。故障すると開かなくなりますが、マニュアルに故障時の開け方が示されています。内装の一部を外し、ロック用のソレノイドを手で動かすという方法になります。


■ トランク

 トランクは、この手の車としては大容量なほうなのかもしれません。ただ、荷物の積み下ろしよりもボディ剛性を優先しているようで、開口部は狭く、トランク空間の上が開くだけです。そのため大きな箱などは、収まるサイズであったとしても、入れることができない場合があります。

08-tr-010.JPG
  トランクの開口部

 進行方向右側の側面にはフタがあり、これを外すとパンタグラフジャッキを収めるスペースがあります(ジャッキは付属していません)。この空間は配線などがむき出しになっているので、ほかの車載工具類を収納するなら、クッション材で保護したり、紐で固定するなどしたほうがよいでしょう。
 トランクを開くにはキーリモコンか、バンパーのナンバープレートのそばに隠れるようについているボタンを押します。こちらもワイヤー式のオープナーや鍵穴などはありません。
 トランクリッドは蝶番で開くタイプではなく、片側2本のリンクとガススプリングで支えています。これによりトランク空間に蝶番部品が飛び出すことはありませんが、強度はちょっと低いかもしれません。

08-tr-020.JPG
  トランクリッドのリンク(全開)

08-tr-030.JPG
  トランクリッドのリンク(半開)

posted by masa at 18:35| 自動車