2020年07月13日

古いエンジン発電機 EG1200X を復活させる −− その2

 圧縮と点火がどうにかなりそうなので、今回はキャブレター掃除をします。


■ キャブレター

 放置したエンジンはだいたいキャブの中の古いガソリンが劣化し、詰まりを起こしていることが多いので、キャプ整備はほぼ必須作業です。
 シリンダヘッドの吸気側に、キャブとエアクリーナーケースが2本の長いスタッドボルトで共締めされています。まずエアクリーナーを外し、ガバナーとスロットルレバーのリンクを外せば、キャブを取り外すことができます。ここでちょっとした問題が。キャブをはずす時、発電機のパイプフレームにキャブのチャンバー部が干渉するのです。そのため、燃料チャンバーを外すか、エンジンを持ち上げ気味にした状態でないと取り付けできません。

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  キャブの取り外し(パイプフレームにあたる)

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  取り外したキャブ


 使用されているのはKEIHINのBE型という汎用エンジン用キャブレターです。シングルバレル、サイドドラフト、バタフライスロットルバルブ、チョークバルブという構成です。バレルの下に燃料チャンバーが、横に燃料コックとフィルターがあり、上側に置かれたタンクから自然落下したガソリンがフロートバルブで調整され、チャンバー内の燃料液面が一定に維持されます。
 チャンバー内の燃料は、縦に配置されたパイプ(チャンバー取り付け兼用)の側面の穴から中に流入し、メインジェット(#60)とノズルを通ってバレル内で気化されます。メインジェットの手前にはスロー系(パイロット系)の分岐があり、別に置かれたスロージェットを通り、パイロットスクリューで調整されてバレル内(バタフライバルブの後)で気化します。発電機の場合、スローでの運転はないので、スロー系はどうでもいいのかなとも思いますが。
 ネットを検索すると、このBE型の互換の中華キャブがいろいろ販売されています。値段は2000円以下からあり、純正の部品を買うより中華キャブに置き換えるほうが安く済みます(メーカーのサイトには中華偽物に注意という喚起があります)。
 キャブを交換するかどうかは後で考えるとして、まずは今のキャブレターを調べます。古いエンジンのキャブレターは、だいたい劣化したガソリンで内部が詰まっているので洗浄します。
 自宅にある自動車用具を物色していたら、キャブクリーナーを発見しました。発電機ほどは古くないにしろ、15年以上は前のものと思われます。シトラスクリーンが新発売され、試供品が付いていた時代のものなので、もしかしたら20年以上前かも。もちろんガスは抜けていたので、缶に穴をあけて適当な瓶に中身の液体を注ぎ、洗浄液として使います。

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  古いキャブクリーナー


 チャンバーを外したところ、思ったよりはよい状態でした。チャンバー内にガム状のものはなく、ちょっと汚れているだけでした。メインジェットのノズルを取り外して点検します。メインジェットは詰まり気味でしたが、年代もののキャブクリーナーに浸けてエアブローで開通しました。

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  チャンバー取り外し

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  チャンバーを外したキャブ

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  チャンバー清掃

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  フロートバルブ、メインジェット、燃料フィルター


 スロー系は分解はせず、空気通路とガソリン通路にキャブクリーナーを垂らし、エアブローするという作業を数回繰り返してクリーニングし、懐中電灯の光やエアブローで開通を確認しました。分解した時点では、スロー系のパイロットスクリューは、締切から2と1/3回転程度の戻しでした。サービスデータによると、2回転、あるいは2と3/8回転戻しが有効な数値のようです。


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  スロースクリュー(金属製)とアイドルスクリュー(黒い樹脂製)、右側はチョークバルブ

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  スロットルバルブ

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  キャブ上部のスロットル、チョーク、奥側に燃料コック


 チャンバーのパッキンはOリングを使っているのですが、これはさすがに変形しており、気密に難ありそうなので、耐燃料タイプの同じような寸法のOリングを用意し、交換しました。燃料フィルター部分にもパッキンがあるのですが、これはまだどうにかなりそうなのでそのまま使います。ダメなら純正ガスケットセットを購入します(最初にOリングを注文した時は、まだパーツリストを入手していなかったのです)。
 燃料コックは、分解すると内部のゴム部品を交換することになりそうなので、開閉操作により通気が開閉されることを確認してよしとします。漏るようならその時考えます。


■ 仮組み立て

 掃除したキャブレターをエンジンに取り付けますが、インテークマニホールドのガスケットがくたびれているので、取り替えます。とりあえず、汎用のガスケットシートを使い、同じ形に切り抜いて使います。

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  ガスケットは新調


 シリンダヘッドにねじ込まれた長いスタッドボルトで、キャブレターとエアクリーナーケースを共締めして取り付けます。

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  キャブを取り付け


 エンジンオイルも、今まで入っていたのは20世紀のものなので、さすがに交換します。とはいっても、入れ替えるのは21世紀初頭に購入したまま未開封だったものですが。
 オイル交換の際には、ロッカーカバーをはずし、ロッカーアームまわりにも注油しておきました。跳ね掛け式なので、この部分には久しくオイルが回っていないと思われるので、初回始動時の初期潤滑のためです。

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  ロッカーカバーをはずしたところ


 今の時点では、ガバナーとスロットルは連結しません。手でスロットルを操作していろいろエンジンをいじってみます。
 燃料タンクはクランクケースの上に位置するので、燃料パイプを新しいものに交換し、キャブにつなぎます。


■ 始動手順

 タンクにガソリンを入れ、燃料コックを開くとキャブのチャンバーまでガソリンが来ます。エンジンの始動は、スイッチをONにしてリコイルを引きます。キャブにはチョークがあるので、エンジンや周囲の温度によって適宜絞ります。エンジンが始動したら、安定して回転するところまでチョークを戻します。暖まったらチョークを完全に戻します。
 このエンジンは空冷で冷却水がないので、シリンダまわりはすぐに暖まります。しかし単にシリンダブロックが暖まるだけでなく、オイルの温度が上がって暖機完了です。

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  燃料コック、チョークの操作部


■ 試運転

 問題がなければ、この手順でエンジンを始動できるのですが、さっそく問題が起きました。燃料コックを開くと、レバーの隙間からガソリンがポタポタと漏れます。コックを閉じても、隙間からにじみ出てきます。これでは危なくて始動できません。
 一度ガソリンを抜き、コックをばらしてみたところ、可動するレバーに接触する内部のゴムパッキン部品がかなり固くなっていました。そのため密着が悪くなり、漏れたのでしょう。この部品はキャブレターのガスケットセットに含まれているので、仕方なくガスケットセットの部品(16010-ZE0-025か16010-ZE0-812)を注文しました。
 新品のゴム部品は、古いものと比べ、厚みが5割増しくらいありました。古いほうは、長年の放置でずっと押されたまま、潰れてしまったのでしょう。。もっともゴム部品はガソリンと接触することで膨潤するので、もしかすると古いものでも、ちょっと待てば膨らんで漏らなくなったのかもしれませんが。


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  燃料コックを分解したところ

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  新旧の燃料コックのパッキン


 ゴム部品の交換でガソリンが漏れなくなったので、いよいよエンジン始動です。発電機として組み立てられている場合は、始動すると即座に発電用の規定回転数になりますが、この時点ではそのためのリンケージを接続していないので、手でスロットルレバーを操作できます。
 コックを開いてガソリンを流し、チャンバーに貯まるまでちょっと待ちます。気温は25度くらいあるので、とりあえずチョークは使わず、スロットルはアイドルより気持ち開けた状態で、リコイルロープを何度か引いたら、エンジンが20年ぶりくらいに息を吹き返しました。


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  試運転(発電機カバーを外した状態)


■ またガソリン漏れ

 エンジンを止め、しばらく置いておいたら、キャブの下にガソリンが漏れていました。調べて見ると、チャンバーをキャブに固定しているボルトか、チャンバーのドレンボルトから染み出しているようです。ガスケット不良を疑い、新しく買ったものに取り替えてみても症状は変わりません。
 チャンバー底面が変形し、密着が悪くなっているのかもしれません。とりあえず液体ガスケットを塗ってごまかします。本当は耐燃料タイプを使わないといけないのですが、手元にないので普通のもので様子を見ます。


■ スロー調整

 とりあえず問題が一通り解決したところで、調整を行います。とはいっても単純なキャブなので、スロー(パイロット)スクリューとアイドルスクリューがあるだけです。
 まずエンジンを十分に暖機します。空冷エンジンなのでシリンダーはすぐに温まりますが、ほかの部分の温度上昇にはしばらくかかります。基本的には、油温が十分に上がったら暖機完了となります。とはいっても油温計も何もないので、単にしばらく回すだけです。
 十分に温まったら、まずパイロットスクリューを調整します。エンジン始動前に規定状態(2と3/8回転戻し)にしておき、スロットルを閉じます。この状態でパイロットスクリューをどちらかに回し、エンジン回転が一番高くなる位置を探します。そしてこの位置から1/4回転ほど戻し、パイロットスクリュー調整とします。
 実際にやってみたところ、多少の回転数の変化はあるものの、だいたい既定値のあたりで問題なさそうなので、それで良しとしました。
 これが終わったら、アイドル回転数を調整します。パイロットスクリューのそばにあるプラスチック製のアイドルアジャストスクリューを回すと、スロットルレバーの絞り位置が調整でき、これでアイドル回転数が決まります。
 GX120の規定アイドル回転数は1400RPM(+200、-100)です。回転計は持っていないので、発電コイルの周波数で回転数を調べます(発電コイルについては後で説明します)。1回転で2サイクルのコイルなら、1400RPMで交流出力は46.6Hzとなります。周波数測定ができるテスターやオシロスコープを使い、アイドル回転数を調整します。

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  テスターを使って周波数を測定

 回転数がかなり高めだったのでこの周波数を目標に落としてみたのですが、回転が不安定になるぎりぎりのようなので、ちょっと高めに設定しました。


■ キャブまわり完成

 スロートアイドルを調整したところで、スロットルレバーをガバナーと連携させます。
 ガバナーレバーは燃料タンクの下にあります。ガバナーレバーとスロットルレバーは曲げた針金のようなリンク部品で繋がります。またこの2つのレバーを弱いバネで結びます。これはレバーの軸穴によるガタを無くすためのものでしょう。
 スロットルがガバナーと連動するようになったら、以後は半固定式の回転数調整レバーの角度をネジで調整し、エンジン回転数を調整することになります。

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  ガバナーとスロットルの連携


 次回は、エンジンのその他各部を見ていきます。
posted by masa at 10:11| 電気機械