2017年06月11日

LEDリングライトをつくる


■ リングライトとは

 小物の撮影や接写を行っていると、被写体にうまく光があてられないことがあります。被写体とカメラが近いために、うまく光源を配置することができないためです。つまり、カメラや被写体そのものが邪魔で、撮影部分が影になってしまうのです。こんな時、レンズのすぐそばに光源を置くことができれば、被写体に光を当てることができます。リングライトは、そのような用途のために、レンズ前部に取り付ける照明装置です。
 レンズの前縁部に円周状に光源を用意すれば、カメラや被写体自体が邪魔になって光が当たらないという状態を回避できます。リングライトはスチル写真では昔から使われている機材で、かつては環状のキセノン灯(ストロボ)が使われていました。これをレンズのフィルターねじを使ってレンズ先端に取り付けることで、レンズを中心として光源が配置され、被写体に均等に光を当てることができます。被写体がレンズ面から数センチ程度の距離であっても、光を当てることができます。また、肉眼では見ることのできない穴の底なども、光源で照らして撮影することができます。
 この写真は、200mmマクロレンズに装着したストロボタイプのリングライトです。

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 リングライトの特徴は、影ができないことです。光源がレンズ周辺に環状にあるので、事実上、光源とレンズが同一軸上に位置するためです。そのため、影で細部が見えないということはなくなりますが、陰影がつきにくいので、画像はのっぺりした感じになります。

■ リングライトをつくる

 写真に示したように、ストロボタイプのリングライトは持っているのですが、これにはいくつか問題があります。

・昔の銀塩カメラ時代のもので、取り付け口径が小さい(52mm程度)。
・ストロボなので、動画撮影ができない。

 というわけで、白色LEDを使った連続発光のリングライトをつくります。

■ 本体

 本体は3Dプリンタで製作し、レンズのフィルター枠にはまる構造とします。うちの3Dプリンタはフィルター用のネジなどとても造形できないので、プラスチックの弾力でなんとなくはまるという構造としました。

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 使っているデジタル一眼2機種、ビデオカメラ1機種で使えるように、フィルター径52mmと72mmのものを作ります。アタッチメントを付け替えてどうこうするのではなく、それぞれのサイズ用に個別に作りました。52mmのほうはLEDを24個、72mmは36個使います。
 最初に52mm用をつくりました。52mm用は、おもにNikonの200mmマクロレンズ(MF時代のもの)と、エントリークラスのデジタル一眼についている標準(18-55mm f3.5-5.6)ズーム用です。この標準ズームは妙に寄れるレンズで、全焦点距離で28cmくらいまで近づけます。なのでちょっとした物撮りなら、マクロレンズを持ち出さなくてもこれで済んでしまうという、使い勝手のよいレンズです。

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 LEDはちょっと内側に向けて取り付けています。LEDは指向性があるので、単純に正面に向けると、極近接時に中心部分が光量不足になりますが、内側に向けることで、リングライト表面から30mmくらいの位置でも、そこそこ均等に照らせます。離れると周辺光量が低下してしまいますが、まぁ接写で使う分には問題ないでしょう。

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 24個のLEDは12個ずつ配線し、2個のトグルスイッチで別々に点灯できます。この点灯数切り替えは、光量調整のために1個おきに配線したのですが、上下に分けて影をつける効果のための配置にしてもよかったかもしれません。

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 72mm用はフルサイズ一眼の標準ズームとビデオカメラ用で、どちらも極端な接写には使わないので、36個のLEDは正面を向けて取り付けています。またスイッチ2個による光量調整もあまり使わないので、スイッチは1個だけです。

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■ LED

 LEDは高演色タイプというもので、秋月で1個40円程度のものです(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-04762/)。これはパッケージ内で白2個と赤1個の3個のLEDチップが直列につながっており、赤のスペクトルを増やしています。低い電圧でぼんやり点灯させると、3個の素子が発光しているのがわかります。
 ただ3個のLEDが直列になる構造なので、VFが約8.5Vと高くなっています。普通なら、数個のLEDを直列にして電流制限抵抗や定電流ダイオードをいれるのですが、このVFのため、今回はLEDひとつにつき100Ωの抵抗1本を直列に入れ、9.6V電源で点灯させることにしました。
 本体ケースへのLEDの固定はホットボンドを使っています。

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■ 撮ってみる

 出来上がったリングライトをカメラに装着すると、こんな感じになります。電線を引きずるのでちょっとうっとうしいですが、リングストロボよりは格段に使い勝手が向上しています。

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 Nikonの18-55標準ズーム(DX)で望遠側でめいっぱい寄ると、こんな感じで撮れます。

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 ベローズと200mmマクロレンズ(DXカメラなので300mm相当)を組み合わせて大げさに撮影すると、こんな感じです。非点灯時のLEDの写真は、直径5mmのLEDをこの構成で撮影したものです。トリミングはしていません。

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posted by masa at 01:33| いろんな工作